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OTONA LOUNGE | Vol.9

黒川 周子(株式会社ベイクウェル)高須 勇人(SUNSHINE+CLOUDデザイナー/社長)

   Text : Masami Watanabe
Photo : Kumiko Suzuki

かっこ良くてチャーミングな大人たちの現在、過去、未来…、その生き様や考え方を垣間見ることができ、Qorretcolorageウェブの読者の皆様にもっと楽しい「今」、さらにポジティブな「明日」を提供する対談企画です。

毎月のゲストが翌月にはお友達を招き、ホストになるリレー形式で展開していきます。今回は、前回のゲスト、高須勇人さんが洋菓子専門店ルコントを経営される黒川周子さんをお招きしてお届けします。

黒川周子さんは、食の伝統に幼少時から触れ、これまでにも様々な「食」に関するプロジェクトに関られていらっしゃいました。現在は、広尾に伝説のフランス菓子店ルコントを復活させ、美味しいお菓子と癒しの空間を提供されています。

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出会い

高須氏(以下、敬称略):もともとの出逢いは震災の年でしたから、3年前になりますね。震災のために活動をされていた黒川さんの話を友人から聞いて、自分たちにも何かできないかとお会いしたのが最初でしたね。予想以上に快活な方で驚きました。あの出逢いがきっかけで、僕の今の葉山の店舗が移転することに繋がったわけですから、濃い出逢いでしたね。

黒川さん(以下、敬称略):その節はありがとうございました(笑)。そのときに色々なお話をして、高須さんがお使いになられることになったんですけれど、本当に葉山にはぴったりの方でした。

高須:そう思って頂けて光栄です。葉山の店舗は、ちょうど前の店舗から他に移ることは考えていた時期だったので、“こんなかんじの空間にしたい”というアイディアは既に持っていました。けれど、あれほど大きな物件とは思っていなかったので、実際に借りることになって、色々とプランを立てては変更、また立てて変更・・・を繰り返しました。でもその甲斐あって、あの空間が完成したわけなんです。
(お店のある)土地や場所は自分のものではなく、そこの土地に属するというか、訪れるみんなのものだと思っているので、お店を所有しているというよりは預かっているという感覚。どうやって有意義にきちんと活用して、地元や訪れる皆さんに還元できるか。意外と真剣にそんなことを思ったりしながら、運営しているつもりです。お店(空間)を訪ねてくれるお客様がハッピーになってくれたらいちばん嬉しい。

黒川:私もお店とはそういう場所だと思っています。ルコントというお店のことでいえば、ルコントは元々フランス人のアンドレ・ルコント氏が日本で作った最初のフランス菓子専門店。彼は日本の洋菓子界に多大な影響を与え、現在でも多くのお弟子さんと彼のお菓子を愛するお客様たちが存在します。だから私は、ルコントのお菓子を作っているけれども、ルコントはお客様のものというか、“ルコント”はお客様が納得して喜んでいただけるものであるべきで、自分のものとは思っていません。なぜならば、私よりもずっと昔からルコントのお菓子を食べ続けているお客様が何万といらっしゃいますので。

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高須:そもそもなんでルコントをやることになったの?

黒川:もともと幼少の頃、私の実家のすぐ近くにルコントがあって、お小遣いを持ってエクレアを買いに行くことが子供ながらの贅沢な時間でした。完全に一ファン!ルコントが閉店した時は、とてもショックを受けたのを覚えています。ルコント家とのご縁が古くからあり、数年前に復活の話に至りまして、私が取り組むことになりました。

長い海外暮らし、そして初めての就職

高須:なるほど。周子さん、生まれは東京だけれど、どこか海外にも行っていらっしゃいましたよね?仕事のスタートも海外?

黒川:中学からイギリスに渡って、大学を卒業するまでいました。その後、アメリカのニューヨークに渡って働き始めました。NYで初めて就職したことになりますね。

高須:どんなことをやっていたの?

黒川:ファッション関係の仕事に就きました。すごくいい経験をさせてもらっていたんですが、帰国することになって、そこからは「食」の道にどっぷりです・・・笑。

高須:それっていつ頃の話なの?きっかけがあったのですか?

黒川:うーん、7年くらい前の話ですかね。自分の中には、常に食に関る何かがしたいと思うところはあって、帰国したタイミングで、雑誌の企画で築地本願寺の中に期間限定でカフェレストランを開くというものがあって、そこにお声かけいただいたのが大きな一歩でしたね。

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高須:へぇー、面白そう。でもそれまではレストラン経営の経験はないということですよね?すごい勇気とチャレンジ!笑

黒川:ですよね(笑)。でも、そのときは未経験でも直感でやってみようって思えたんです。レストランの仕事は時間も長いし、地道な仕事も多く、楽しく明るいイメージと美味しいメニューの裏には様々な課題がたくさんありました。朝から晩まで必死に働いて、1年間死にもの狂いで挑みました。

「直感」を信じる

高須:「直感で」っていう表現が出ましたけれど、みんな直感で選んでも正しいか正しくないかの答えが出る前に諦めてしまうことが多い気がする。周子さんは成功するかしないかの見極めはどうしているのかな?

黒川:直感って、結局は自分の過去の経験に基づいているものだと思っているので、まずは自分が自分自身を信じる。そして何かを選んだら、そのあとはそれを継続できるように一生懸命に努力をすることしかないのかなと思いますが、高須さんはいかがですか?

高須:僕の場合は、自分のスイートスポットというか反応できることがすごく狭いの。好きだな、これいいなと思えば、それは直感でGOのサイン。自分がこんなにいいと思っているのだから、他の人もそう思うはず・・・というだけですね。だから成功するかしないかの見極めは、これと思ったことはひたすらやり続けること。やり続けながら、どうにかいい方向に行くように願う(笑)。

黒川:先にある答えを想定しながら、そこに向かってどう動いて行くのか。それしかないですかね、やっぱり。飲食店では日々の掃除とか基本的な仕事をどのように継続していけるかがとっても大切な気がします。私も地味にコツコツとやることがどれほど大切ですごいことかを少しずつ実感し始めています。今は、日々お客様と接する中で新しい発見があり、それが何よりの刺激なので、そういう日々のことに楽しみを感じ、見落とさない環境作りは必要だなと感じています。

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高須:僕たちアパレルも同じ。やっぱりお客様に鍛えられ、育てられていると感じます。で、次はどんなことをしよう(したい)と考えているの?

黒川:まだルコントを始めて2年なので、まずはこれをきちんと軌道に乗せたいですね。現在、この広尾の店舗と三越日本橋本店に出店していますが、来月銀座にもう1店舗増やし、軸足を固めたいと思っています。

高須:でも、店舗以外にもプロデュースとか様々な仕事のオファーがきているでしょう。そういう店舗以外の案件はどうしているのでしょう?

黒川:可能な限りお受けしたいと思っています。そういったお仕事は、クライアントの要望に応えるように食の空間を作り上げるとか、そういった内容が多いのでルコントの形態とは異なりますがとっても面白い。刺激と自分の力にもなるし、逆にそこに没頭することがいい意味で気分転換になっている気もします。ところで、東京の人は気分転換で葉山を訪れたりしますが、葉山にお住まいだとどこに行ったり、どんなふうに気分転換をされているのでしょう?

高須:確かにね、葉山で早朝に散歩に出たり、泳いだりするとすごくリフレッシュできる。だから僕の場合は、そんな大好きな気持ちのいい場所に仕事場を作ってしまったことがそもそも失敗なのかもしれないね。やっぱり、葉山ではお客様に会うので、ちゃんと髭は剃らなくてはいけないもんね(笑)。リラックスしすぎることはできません。

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黒川:そうかもしれませんね(笑)。高須さんは葉山の現在の場所に移られて1年半、会社自体は20年ですよね?継続するって本当にすごいこと!1代って約30年といわれている中で、そのスパンのバトンを繋いでいく・・・と考えたときに20年は3分の2。30年ってすごく長いですよね。辞めたいと思ったことは?

高須:うーん、ありますよ(笑)。でもね、早い時期に失敗できたことがよかったね。年齢を重ねたら、大荷物は背負えなくなっていくから。

ふたつの転機

黒川:確かに、私も日々保守的になっていることに気がつくことがあります。中学生のときには何のためらいもなく、外国に住むことができたのに(笑)。自分の中のジャンプ力は弱まっているなと感じます。

高須:え、そう?僕からみた周子さんは、何かこうガッと行くイメージで、いい意味で強いなと思いますよ。やっぱりね、あんまり情報を持ち過ぎないほうがいいんですよ。今は、本当にインフォメーションが多すぎる。この間もある人とね、スマートフォンが主流になって電話は頭が良くなったけど、僕たち人間は馬鹿になっていっているよねって話していた。情報がありすぎて、直感がにぶる。決めてしまうことが怖くなっている気はします。

黒川:なるほど。意識してアナログでいようとすることも、時に必要なのかもしれませんね。

高須:最後は自分自身で何かを選び取ることができるか、有り余る情報の中で選べずに終わってしまうかのどちらかなのかな、と。ところで、周子さんの今までの人生の中での転機は何かありましたか?

黒川:ひとつは中学でイギリスに渡ったことです。祖父母の親友がイギリス人で、夏休みにたまたま遊びに行ったんですけれど、そのとき偶然訪問した学校に、中学生の私は直感で“行きたい!”と思ってしまった。私はその直感を信じて、両親もまた自分の意志で行きたいと決めた当時の私の決断を許してくれました。あの時に、行かなかったら人生は違っていたと思います。

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高須:すごい直感だよね。

黒川:でもね、実はイギリスに行ってから日本人は私一人という環境で、毎日毎日帰りたいと思っていた時期もありました。でも、今ここで帰ったら悔しいという気持ちだけで12年間も住まうことになった。そのときのことが今でも、「あれができたのだから、辛いことがあっても続けてみたら面白いことに繋がるかも!」と考えられる自信みたいなものになった気がします。

高須:素晴らしいね。だって、直感を貫くってそんなに容易いことではないもの。

黒川:もうひとつは、東京に戻った時に、ソトコトの小黒編集長に、「食に関する仕事に携わりたいけれども、どうしたらいいのだろう」と相談したこと。それで、築地本願寺の企画を“やってみたら?”と言ってもらえた。私はもちろん直感で“やりたい!”と思いましたけれど、経験も何もない若い私に「やってみたらいいよ」と背中を押してチャンスを頂けたことはいろんな意味で自分にとって大きな出来事でした。

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人生、ずっと現役

高須:僕ね、先月、この対談の話を頂いた時に、渡邊編集長から聞いたコンセプトを考えても、バトンを繋ぐのは黒川さんがいいなって直感で思ったんですよ。

黒川:ありがとうございます(笑)。本当に、コレカラージュのコンセプトは素敵ですね。実は私の母が老年心理学の仕事に携わっていて、子供の頃から「大人になるってとっても楽しく、素敵なこと」だと言われて育っているので、すごく共感できます。これからの人口分布を考えても、もっと大人が楽しめる世の中になってくればいいですよね。人生設計も、仕事設計も、長いスパンで考えていきたいなと。

高須:へぇ〜。深いね。まだ30代でしょ?(笑)

黒川:はい。20代でやっておこうと思っていたことが実は全然できていないので、30代ではもう少し頑張って、40代までにいろいろと整えておこうとは思っています。

高須:20代、30代で走っていないと、40代でいきなりは走れないからね。思いっきり走っておいたらいいと思う。で、50代〜60代はその余力を使って上手く走り続ける。

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黒川:なるほど。私の両親は二人とも仕事を持ち、まだ現役。今でも忙しくしています。私よりも忙しいくらい!とても尊敬していますね。私もずっとアクティブでいたいと思います。でもね、もっとパワフルなのが私の祖母。50歳のときに、フランスの宝飾店からお声がけいただいて、当時アメリカ在住でしたが、祖父を置いて単身赴任をし、そこから10年以上、バリバリ働いていました。祖母は今も元気で、毎日ハッピーハッピーと言って、本当に楽しそうにしています(笑)。

高須:わ、さすが黒川家は面白い方が揃っているんですね。

黒川:そういう元気な大人をたくさん見ているので、私はこれからの毎日が楽しみです(笑)。

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黒川 周子
(Chikako Kurokawa)
1980年生まれ。聖心女子学院初等科から聖心女子学院中等科に進み、3年生の夏休みに渡英。 St.Elphin`s School 入学、その後 高校はCCSSに進学、University of London, King`s CollegeからUniversity of London, Goldsmiths College への編入を経て、卒業後は渡米。45 rpm USA入社。帰国後は、(株)木楽舎に入社し、築地本願寺内境内にて、カフェ・レストラン『カフェ・ド・シンラン』をオープン。2009年にくろかわちかこ事務所を設立し、飲食店コンサルティング業務に携わりながら、2012年 株式会社ベイクウェルを設立。ルコントを開店。
高須 勇人
(Hayato Takasu)
昭和39年生まれ。カリフォルニア州ウエストモント大学卒。
有限会社グローンインザサン 代表取締役
代官山にG.O.D. 葉山でSUNSHINE+CLOUD 及び HAYAMA GUESTHOUSE
奄美大島で PARADISE+INN 及びPARADISE STOREを運営。
前世は修行僧(たぶん)
SUNSHINE+CLOUD
http://www.sunshine-cloud.com

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