Qorretcolorage - コレカラージュ

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マチュアを楽しむ、ヒトマガジン
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OTONA LOUNGE | Vol.17

櫻井 稔(takram design engineering)加藤 大直(Genkei代表)

   Text : Masami Watanabe
Photo : Rumi Usui

かっこ良くてチャーミングな大人たちの現在、過去、未来…、その生き様や考え方を垣間見ることができ、Qorretcolorageウェブの読者の皆様にもっと楽しい「今」、さらにポジティブな「明日」を感じて頂く対談企画です。

毎月のゲストが翌月にはお友達を招き、ホストになるリレー形式で展開していきます。今回は、前回のゲスト、Genkei代表の加藤大直さんが、takramの櫻井稔さんをお迎えしてお届けします。

櫻井さんは、「デザインから考えるコンピュータ環境の研究」を基礎に多くの作品を製作していらしゃいます。2007年にはスーパークリエイター認定も受け、takram design engineering及び電通CDCに所属し、ビッグデータを活用したデータヴィジュアライゼーションの分野で活躍されています。そんな櫻井さんの子供時代、「今」と「これから」について伺います。

加藤大直さん(以下、加藤):サクちゃんとは、かれこれ11年くらいの付き合いになるのかな?新美(新宿美術学院)という藝大/美大向けの予備校時代から知ってるもんね。

櫻井稔さん(以下、櫻井):ふたりとも藝大受験コースだったもんね。懐かしいな(笑)。

加藤:でも、よく考えたら、僕はどうしてサクちゃんが藝大を目指したのか、理由を知らない。聞いたこと、なかったよね?

櫻井:そうかもしれないね。話した記憶がない(笑)。

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加藤:どうして目指したの?

櫻井:ええと、親がふたりとも藝大出身。だから昔から両親に影響されて導かれたのかもしれない。

加藤:あー、やっぱりそうなんだ!だって、今だから言うけど、当時からサクちゃんは“藝大サラブレッド ”疑惑があったもん(笑)。

櫻井: 幼少の頃から、藝大の前を通るたびに「ここは良い学校だよ〜」って言われてた(笑)。

加藤:ご両親は藝大の何コースだったの?

櫻井:父親がデザインで、母親がバイオリン。

加藤:かっこいいー。

櫻井:だから小さい頃は、左手にバイオリン、右手にクレヨンを持たされていたんだよね(笑)。

加藤:では、バイオリンは今でも弾けるの?

櫻井:いや、もう弾けない。というか、5歳の時に「キラキラ星」を 弾いて、それで満足している僕を見て、母親も諦めたみたい。だから、僕は完全にアート&デザイン寄りです。

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加藤:でも、どっちに転んでも結局のところ、サクちゃんは藝大コースなんだよね 。

櫻井:まぁ、環境はそうだったけど、僕の場合は4浪しているからね(笑)。

加藤:あ、そうだったね(笑)。

櫻井:さすがにこれ以上、浪人生をやったら迷惑だろうなと悩んだ。親は、“いつまででもやっていていいよ”というスタンスで、それが逆にものすごいプレッシャーだったね。僕はやっぱり親を超えられないんだという感覚もなんとなく芽生え始めて、苦しかった。

加藤:そうか。そういう学歴コンプレックスもあるんだね。でもね、サクちゃんは結果的に藝大に進学して、藝大自体は基本的にアナログスタイルの天才が多いわけでしょう?その中で、デジタルにも強くて、デザインにも長けているサクちゃんはちょっと異彩を放った存在だったと思うんだよね。そのコンピュータとアートの融合スタイルはどうやって生まれたの?

櫻井: これは偶然にそうなっていった感じ。高校生の頃から、パソコンをいじるのが好きで、浪人中もいつもパソコンで何かをやっていた。そしたら、浪人2年目くらいで、両親から「パソコンをやるから駄目になる!」と咎められて、家中のパソコンをすべて捨てられて…。それで、僕は一時期、エロ本のようにパソコンをベッドの下に隠していたことがあったくらい(笑)。そんな時期に、昼間は予備校で絵を描いているわけでしょう?それで、この一見交わらなさそうな2つのことをどこかで交わらせてしまえばいいと思いついた。それでパソコンのケースを作品として作っていこう!と。それなら堂々とパソコンに触れるでしょう(笑)。あきれるくらい単純で、シンプルな理由でそんなことを考えてた。

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加藤:すごいなぁ(笑)。純粋なんだか、不純なんだかわからない動機(笑)。

櫻井:それで、結構たくさんのデザインスケッチを描いたんだよね(笑)。だけど、大学に進学して、当時だんだんとプログラミングというものが美術に使われるようになり始めて、ソフトウェアを使ったデザインに興味を持つようになった。実際には、大学1年の時に師匠と呼ぶべき人物に出会って、「櫻井くん、君はプログラムを書かなければいけない」と言われて、それがズンと心に響いた。それから、ひと夏の間、とにかくプログラムで遊んでいた気がする。思いついては、プログラムを書いてみて、40個くらい書いたかな。で、それを師匠にも見せてみたりして。そしたら、「櫻井くんは、これをもっと続けてみると、きっともっと面白いことが起こるよ」と褒めてもらって、産業総合技術研究所に遊びに来なさいと誘われた。それで、実際にはそこで勉強を兼ねてアルバイトを始めたんだよね。

加藤:それって、つくばにある産業総合技術研究所? そこにはすごい人たちが揃っているんだよね?いわゆるスーパークリエーターがいっぱい!

櫻井: そう。僕の師匠は江渡浩一郎さん。メディアアーティストとして優秀で、とても有名な方。その上には、iPhoneの日本語入力を作った増井俊之さんがいて、江渡さんの隣の席には、イグ・ノーベル賞を受賞した塚田浩二さん。いわゆるユーザインターフェイス分野ではゴールデンメンバーと言われている人たちが揃っていたんだよね。そんな皆さんに影響されながら作ったのが、ループする動画の上に絵が描ける、シークエンシャル・グラフィクスというソフト。

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加藤:完全にデザインテクノロジー(DT)の分野だね。

櫻井:今でこそ、そういうワードが出てきているから、「君、何やる人?」と聞かれて、“デザインエンジニアです”とか“クリエイティブコーダーです”とか、説明がしやすくなったけど、昔はそういう言語が日本にはなかったからね。

加藤: そうだね。デザインエンジニアって、サーバーを立てる人?ウェブサイトを作る人?!みたいにね。ちょっとズレていたところはありましたね。でもさ、サクちゃんの話を聞いたり、これまでのサクちゃんのやってきたことを見ていると、こういうコンピュータ系の新しいネイチャーにすぐに順応できるタイプだと思うんだよね。アメリカやヨーロッパのごく一部では、そういう分野が誕生したりしているから、追いつく人材も早く出てきたりするけれど、日本は一般論として、この分野の発達が遅いでしょう。だから、サクちゃんは普通の人より2~3年脳みそがちょっと先を行き過ぎてしまっていて、他の人がそこに追いつくのに3~5年かかってしまう…みたいな時差があるような気がする。きっと、本人はいろんな偶然が重なってこうなっていると思っているのかもしれないけどね。

櫻井: 今までになかったものを初めて道具として認識する“ネイティブ世代”と呼ばれる人たちが出てくるタイミングって、歴史的にも繰り返されているよね?たとえば、カメラが普通でなかった時代に、写真を使った何かを最初に始める人がいたり、ひとつの技術の塊でしかなかったものが、表現が変わった瞬間に道具として認識されるような。たまたま、僕がやってきたコンピュータというものを使った技術と表現において、ひとつの過渡期がバン!って来た。そこに我々がちょうどいた、みたいな感じなんだろうね。

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加藤:僕はね、実は美大に行ってから4年間はテクノロジーに触らないでおこうと密かに心に決めていた。今でも当時の作品を見てみると、一切テクノロジー感はなくて、どれもアナログ的解決を経て完成したものばかり。自分自身で、テクノロジーを触ってしまうと、そのパワーを使って、その力に頼ってしまうということがわかっていたから、なんとなく敬遠していた。なんかね、ツールに翻弄されて、それってデザインじゃないのではないかという気がしてね。

櫻井:それと通じるかもしれないけど、僕が最初に他の人がコンピュータを使ったデザインをしているというのを見たとき、それはイラストレーターやフォトショップでデザインをするということだった。誰もがどちらかのソフトを使ってデザインをしていた。それはそれでいいのだけれど、突き詰めるとイラストレーターやフォトショップでできるデザインしか出てこないことになる。結局、自由に何もできなくて、枠を超えられなくて、常に何かの制限の中での作品作りになる。僕は、そこにいっぱい疑問を持ってしまったんだよね。それって筆を持ったことがない画家と一緒なんじゃないかと。だって、まっさらなところに、独自の自由な作品を構築することができないわけでしょう。それで、僕は博士課程まで進んで、「ない道具は作る」という研究に没頭。いかに、コンピュータの中に新しい道具を作って、自由な表現ができかが重要なんじゃないかと思ってね。

加藤: サクちゃんの作ったパソコンの中でエアブラシを使って空中に絵を描いちゃうソフトは今見てもすごいよね。

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櫻井:ありがとう。筆で描く「絵」は、やっぱり紙(平面)の上にのせることが一番だと思うんだよね。パソコンでそれをやろうとしても、紙の上のその感じには到底叶わない。だとすると、コンピュータにはコンピュータに適した表現があるはずだと、ずっと信じて、その新しい表現方法はなんだろう?と考え始めたら、自然と道具を開発する方向に行った。

加藤:もっと自由な表現を求めたんだね。 道具から作る発想のない人は、どうしても今ある中でどうやってやろうかと考える。そうじゃなくて、こんな風にしたいからこういう道具を作ろうと頭を切り替えると、デザイン自体がグッと豊かになるよね。

櫻井:そう思う。だから、今までの既定の概念にとらわれずに思考して、それを実行するための道具を一から作る。そこを大事に、丁寧にモノづくりしていくことが僕のテーマかな。そんなことを考えてずっとやってきて、最近ではその技術を使ってどうやって社会に貢献するか、僕のモノづくりを社会に落とし込むかと考えたときに作ったのが様々なデータを可視化するソフト。経済とか、気象情報とか、いろいろなものをすべて可視化する。

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加藤:気象は3Dでやりましたね。でも、経済ってすごいね。

櫻井:例えば、地方創生で東京から地方にお金が渡る。それが、実際にどのように使われて、どの地域にどれだけ定着するか、とか、今まで案外見えていなかったんじゃないかと思う。経済産業省に依頼されて作ったRESASっていうソフトでは、レントゲンみたいに日本全体の中でお金がどう回っているのかを見ることができる。可視化したことで、不透明な点や疑問点も一目瞭然になる。

加藤:すごい。なんか非常に「ミッション・インポッシブル」的な感じですね(笑)。 これは国家機密なんじゃないの?(笑)これは何年くらいかかって開発したの?

櫻井:1年くらい。何回も何回も作り直して、やっといい感じになってきて、今セカンドフェイズに取り掛かってます。あとね、これは世界中のフライトデータをビジュアル化したもの。リアルタイムで見られる。

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加藤:へぇ~。 面白い。

櫻井:そうやってね、「へぇ~」とか「すごい」って言ってもらえるんだけど、これは多くの中の一例で、この地球上でどんなことが起こっているか、様々なことを表現したかった。だから、まずは地球上で起こっていることを表現するための仮想の地球を作ったんだよね。後はここにいろんなデータを入れていけば、いろんな状況の可視化が表示できる。衛星情報なんかも見られるよ。

加藤:サクちゃんは、大体のものをビジュアライゼーションできると思うんだけど、今いちばんやってみたいのはどんなこと?

櫻井:今、ビジュアライゼーションというと地球規模のものが多いんだけど、これを人間単位で考えたら面白いかなと思ってる。すでに、医療現場でのビジュアライゼーションもたくさんあって、たとえば腹部に内臓をプロジェクションをして手術をするようなことも試されてる。個人的には、この先はスポーツ分野が面白い思っているから、アスリートの体をビジュアライゼーションできる道具を開発してみたい。血圧や血液から、個人の様々な状態が可視化できるとかね。オリンピックに向けて、関連する何かのビジュアライゼーションを実現することが今の僕の課題でもあるかな。

加藤:ビジュアライゼーションって、今まではメディアアートの分野でしかなかったけど、変わってきているんだね。メディアアートの範囲内では「ね、きれいでしょう?以上、終わり」みたいな 感じだものね。

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櫻井:そうだね。今までは、メディアアートの分野の中でのビジュアライゼーションだったけれど、これからは変わってくる。今までは見るだけで終わっていたビジュアライゼーションが道具として使うためのビジュアライゼーションになってくる。PDCAと呼ばれるビジネスサイクルがあるんだけど、これは事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法のひとつで、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4 段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善することが可能になる。たとえば、どこかの地域が困った状況になっているとする。さっきの経済の可視化ソフト上で、全体像が掴みづらかった問題が俯瞰できると、より的確な改善策をすぐに打つことが可能になる。改善されたら、その改善も翌年そこに表示される。そんなサイクルで活用出来るビジュアライゼーションの役割を作っていきたいと思ってる。

加藤:いいね、それ。すごくいいと思います。僕もいつかまたサクちゃんと何か面白いプロジェクトをやりたいな。

櫻井:やりましょう。

加藤:そうだ、サクちゃんの失敗の話を聞いていなかった(笑)。 優秀で、サラブレッドでここまで来ているサクちゃんだけど、転機とか失敗だったなぁということはあったの?

櫻井:浪人(笑)。 いや、それは大したことなかったな、今思えば。真面目な答えをすると、2008年に会社を作ったんです。システムエンジニアリングの会社で、上場するつもりでスタートさせたんだけど、あまり上手くいかなくてね。独自のコンピュータのOSを作り始めて、紆余曲折あって、最終的にはなんとか稼働はし始めたんだけれど、その頃にはいろいろありすぎて疲れてしまって。それで、売却した。会社は生き物みたいなものだから、いろんなハプニングやトラブルをその都度ちゃんとメンテナンスしながら進めて行かなくてならない。それが自分には全くできていなかったんだよね。僕の中での大きな失敗。今だから、その経験が少しは栄養になっていると言えるようになったけど、やっぱり怖い経験だった。

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加藤:では、もう失敗は怖くない?(笑)

櫻井:いや、怖いです。できればあんな思いはしたくないね(笑)。

加藤:でもさ、なんだかんだ言っても、サクちゃんも僕もこうしてある程度やりたいことがやれているのだから、今の環境に感謝ですね。

櫻井:それはそうだね。切羽詰まることも、まだまだあるけどね(笑)。

加藤:最近、新聞に載るクリエーターってバッシングされているネガティブな記事がほとんどなんだよね。よいケースで掲載されることはまだまだ珍しい。だから、僕たちは将来的に何かいい話題で誌面に出られたらいいよね(笑)。

櫻井:頑張りましょう(笑)。よい意味で出る杭になりたいものだよね。

加藤:今後のサクちゃんの活躍に期待しています。今日はあらためて良い話が聞けて嬉しかったです。ありがとうございました。

櫻井 稔
(Minoru Sakurai)
takram design engineering
デザインから考えるコンピュータ環境の研究・製作を行う。ビッグデータビジュアライゼーションや3Dプリンティング・UI/UX領域について積極的に取り組んでいる。2007年未踏ソフトウェア創造事業スーパークリエータ認定。2014年東京藝術大学美術研究科デザイン専攻博士後期課程修了。代表作に「日本科学未来館・地球マテリアルブック」、データサイエンス支援ツール「DataDiver」のUI設計・デザイン、日本政府のビッグデータビジュアライゼーションシステム「RESAS -地域経済分析システム-」のプロトタイピングなどがある。グッドデ ザイン賞金賞(2015)など受賞多数。
加藤 大直
(Hironao Kato)
Genkei 共同代表 兼 RepRap Community Japan 代表、New York Parsons美術大学BFA卒
大学 卒業後現地にてプロダクト/インテリアデザイナーとして従事。帰国後RepRap Community Japan共同創設。その後Genkeiを共同創業、国内初の組立てられる3Dプリンターatom発表や、組立てワークショップを全国開催し日本における 個人用3Dプリンター導入の先駆となる。現在は、コンセプトを主としたプロダクトデザイン活動から人間の六感とデジタルを融合させる研究、製作活動を行っている。
http://genkei.jp

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