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Revive Japan - Travel Note | Vol.2

「木を食べる」- 天竜杉と樽脇園

   Text : Keiichi Hasegawa
Photo : Keiichi Hasegawa

「Revive Japan – Travel Note」と題する本コラムでは、コレカラージュのエンジニア/エディターでもある長谷川圭一が、日本で再生・活性化されるべき事業や文化にフォーカスし、その分野で活躍されている方々を特集していきます。

前回は、筆者が元々関心を持っていた「木を食べる」ということについて、静岡県の天竜杉を使った「食べる木」の普及に尽力されている、有機茶農家の樽脇さんにお話をおうかがいしました。第二回は、その樽脇さん一家が営む、静岡県川根本町の樽脇園へと足を運び、茶畑の様子を拝見してきました。

樽脇園は、静岡県の川根本町に位置し、その中でも最も標高の高い場所にあります。天文ファンの間では星の観測地としても有名な、その場所に直接おうかがいし、話を聞きしました。

Q.樽脇園の畑について、教えてください。

樽脇 美昭(以下「美」).元々この辺りは木ばかりで、土が肥えていたわけではなかったんです。今の畑にする前は、当時は珍しかったブロイラーを飼育していたことがありまして、3万羽以上のブロイラーを飼っていました。その後、杉林を切り開き、畑を開墾しました。

Q.畑には、毎日いらっしゃっているのでしょうか?

美.ほとんど毎日来てますよ。自分が面倒をみないといけないからね。今は、こうして畑が綺麗に見えるでしょう?でも、畑を始めた頃は、葉っぱなんてすぐに落ちちゃって、何年かして、やっと綺麗になったんですよ。

Q.現在、お茶は機械で収穫されているんですよね?

美.今では、レールを引いて、機械に自動で畑をならさせています。

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Q.樽脇さんも、毎日お茶を飲まれますか?

美.お茶は毎日飲むね。朝起きてすぐに飲んで、食後にも必ず飲みます。

Q.木を食べることについては、どう思われますか?
僕は、そもそも檜の香りが好きすぎて、芳香用のチップを食べだしたのが、ここに至るきっかけだったのですが。

美.色々な人がいますから、日本には、他にも、そういう人がいると思います。ただ、今までに前例が無かったから、はじめは、どんなものなのかと思いました。
おがっティーも、最初は杉と檜の両方で試しましたが、香りが強すぎたので、杉を使うことになったんです。

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樽脇靖明(以下「靖」).ここは、いいところでしょう?
標高は、大体630メートル。昼と夜では、大分気温が違いますよ。

美.夏でも、陽が出てれば暑いけれど、陰ればすぐに涼しくなります。下の方と違って、極端に温度が下がるんです。

Q.冬は雪が降ったりするのでしょうか?

美.雪はほとんど降らないです。

靖.だから、かえって寒さが身に染みるんですよね。雪が降った方が、降らないより、あたたかく感じることがあるでしょう?

Q.低地の畑と比べて、土の質などに違いはありますか?

美.そもそも山を切り開いたものだから、あまり深く掘っても岩ばかりで腐葉土も少ないため、堆肥を入れないと、お茶を育てる土にはならなかったんです。しかし、化学肥料だけじゃ、ここまで柔らかく黒い土にはならないから、鶏肥をつかって土を耕しました。

靖.ここで育てている茶の木の種類は「やぶきた」ですが、やぶきたは肥料(チッ素)をしっかり入れないとおいしいお茶にならないんです。

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美.低地の平らな畑は、それほど寒くならないから、病気は少ないけれど、その分、害虫は多くなります。一方で、この辺りは、害虫には困りませんが、病気が怖いです。

靖.炭疽病や、もち病などにかかってしまうと新芽の生育が止まってしまうんです。昨年は雨が多かったこともあって、一部が病気になってしまい、二番茶は、いつもの三分の一しか取れませんでした。

美.自然が相手なので、毎年同じように収穫することは難しいんです。

靖.浜松市は、有機茶の収穫適性を実験したりデータ化していますが、結局は個々の畑に合ったやり方があるので、自分たちで見極めていくしかないんですよね。

Q.それだけ、時間をかけて、畑を育てて来たというわけですね。
お茶の木は、ずっと同じものを育て続けているのですか?あるいは、新しい木を定期的に植えたりしているのでしょうか。

靖.剪定などを繰り返して30年くらいは同じ木で収穫しています。新しく植えたとことろもありますよ。

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Q.一から畑を耕して、ここまでの状態にするには、どれくらいの年数がかかるのでしょう?

美.5〜6年でお茶が取れるようになりますが、この状態にするのに、10年はかかります。

靖.(化学肥料や農薬を用いた)普通の畑は、3年程度で育ちますが、有機だと、どうしても倍の年数が必要になります。

Q.月齢で収穫するには、この場所のように、高低差がある方が適しているのでしょうか?(「月齢」による収穫については、前回のコラムを参照)

靖.高低差のある茶畑のおかげで、新月の茶・満月の茶を収穫した時の新芽の成長具合がほぼ同じ状態で収穫ができます。

Q.この畑で収穫したお茶は、どのように加工されていくのでしょうか?

靖.まず、摘んできたお茶を機械に流し、蒸し機で製造するお茶に適した温度や時間で蒸します。3分くらいで深蒸し、2分くらいで浅蒸しの状態になります。この蒸し工程で味や香りが決まります。私のところは浅蒸しです。

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靖.次に冷却器へ通し、熱を飛ばします。

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靖.そして、葉打ち工程・粗揉工程で繊維をつぶしながら徐々に水分を取り除きます。揉捻工程では、石臼のような機械でお茶をこねます。

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靖.そして、中柔工程では再度あたため直して乾燥し、精柔工程でみなさんがよく見るお茶の葉になります。そして棒取り機で茎の部分を取り、むらが出ないよう混ぜ合わせます。

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靖.この一工程により、生葉120kgで約25kgのお茶が製造できます。これが、お茶作りの流れになります。

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Q.ところで、この辺りは、とても高い場所なので、夜にはたくさんの星が見えそうですね。

靖.見えますね〜。この場所で撮影した銀河の写真が、天文雑誌の表紙になったこともあります。

Q.ここで、星を見ながら、お茶を飲むイベントを開催したら、楽しそうですね。それこそ、天竜杉を使った升で日本酒を呑みながらとか。

靖.それは、是非やってみたいですね。

Q.お茶の他に、柚子も育てられているんですよね?

靖.柚子も一部、無農薬で育てていますが、寒暖の差が大きいと、しっかりとした皮になり、高い香りがします。無農薬で育てている柚子は、スーパーに並んでいるような、圴一な見た目にはなりませんが、体に良い、美味しい柚子が育ちます。日本のスーパーは、大量生産で、見た目が綺麗な“製品”ばかりを欲しがります。見た目がきれいな柚子をたくさん作るには農薬を使わないとできません。日本も、欧米のように、有機とそうでないものを並べて売るような店が増えて欲しいと思っています。

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Q.この茶畑は、何代まで続けて欲しいと思いますか?

美.考えたこともないけれど、誰かに後を継いでもらえればいいと思っています。

Q.今の畑になる以前は、林業をされていたと聞いていますが。

美.茶畑の前は林業をやっていましたが、畑を始めた頃には、山や木の値段が、かなり下がってしまい、時代が変わったことを痛感しました。

Q.現在は、行政側も、あまり協力的でなかったり、助成体制が、それほどよくないような話を聞きました。

美.例えば、農協も、私たち生産者が作ってきた組織なのに、今は体制が変わってしまいました。肥料なども安く提供してくれていたのですが、現在では、ホームセンターで買った方が安いような状況になり、非常に困っています。

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Q.これまでは、大量生産の時代が続きましたが、これからは、場所そのものの「体験」であったり、生産者の姿が見える「有機作物」のようなものに価値が見出されると思っています。
例えば、ここに来る際、静岡駅で思いましたが、どの街も、駅前は都心と変わらず、同じコンビニやショッピングモールがあって、非常に均一化されていると感じました。ですから、なおさら、樽脇園のような素晴らしい自然のある場所や、先ほどのゆずの話のように、有機生産の食べ物が見直される時代がやってくると思います。もっとも、そのような良い場所や食べ物があっても、人に知られなければ、廃れていくだけですので、僕も、樽脇園のような日本にある素晴らしいものを広めていきたいと思います。

美.私たちも、今やっていることを続けられるよう努力していきますので、ぜひ、よろしくお願いします。

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» 樽脇園ウェブサイト
» 樽脇園オンラインストア

樽脇 靖明
(Yasuaki Taruwaki)
静岡県川根本町の茶畑「樽脇園」を親子二代で営む。日本全体で僅か2%しか生産されていない「無農薬・有機栽培茶」を生産し、全国のファーマーズマーケットやマルシェなどで販売。
又、地元林業の製材所や大学教授と共に、天竜杉を使った「食べられる木」の開発・生産化に尽力。お茶産業、地元林業など、地域再生に向けての活動も行なっている。
樽脇 美昭
(Yoshiaki Taruwaki)
先代より引き継いだ川根の山を開墾し、有機栽培によるお茶の「樽脇園」を作り、今に至る。
有機栽培茶や、地元林業の活性化に尽力する息子「樽脇 靖明」と共に、親子二代で樽脇園を営む。
長谷川 圭一
(Keiichi Hasegawa)
インターネット黎明期から培ったスキルをベースに、プログラミング、サーバー、ネットワークに精通し、DTP、DTM、DTVから、翻訳、ライター、DJと、多岐にわたる分野を行き来する超雑食系男子。Qorretcolorageでは、ウェブサイトのプログラム、エディトリアル関連を担当。

http://mentalposition.com

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