数々の国内リゾートを手掛け、日本旅の魅力を提案している星野リゾートの星野社長と世界中を走り回るトラベルジャーナリスト寺田直子さん。
Mirroir世代のふたりが恋する旅を語ります。
ー 本当のリゾートの魅力とは
寺田(以下寺):星のや竹富島、泊まってきました。
星野(以下星):ありがとうございます。
寺:料理がおいしかったです。
星:琉球料理をベースにしたフレンチです。沖縄は洋食が期待されていないので、食でアピールできるようにしていきたいと思います。
寺:スタッフも開業直後でもっとパツパツな状態かなと思ったけど、意外とそうでもなくて。合格点、あげちゃいます。でも、あれはやっぱり沖縄マジックですよね。竹富マジックと言うか。あのゆるい空気感。あそこに行っちゃったらもう、細かいことはどうでもいいかなみたいな。
星:そうですね、本当に。
寺:でも星野さんは社内では「白くま」と呼ばれているように、雪男で寒いところが大好きだから、ああいう暑いところダメなんじゃないですか?
星:そうなんです。冬の間は良かったですよ、湿度も気温も。夏は暑すぎちゃって。でも冬は、スキー場のほうが忙しいというか、行きたいところがたくさんあって、沖縄になかなか行く時間がなかったりするんです。
寺:ビーチリゾートには行ったりするんですか?
星:私は個人的には行くことが少ないです。以前はよく視察などで行きましたけど、今は行くことが少なくなってきましたね。
寺:あえてどこか、お気に入りのところ、思い出のあるリゾートは?
星:思い出のあるリゾートは…世界でですか? シーサイドというリゾートがアメリカのフロリダ州ペンサコーラという町にあるんです。ここはハーバード大学の建築を出た人がお父さんから巨大な、どうしようもない土地を相続したところなんですけど。すごく広いんですが、彼はお金がないので真ん中に、すごく小さな自分のコンセプトを反映した建物を4つ作ったんです。で、それが私はなぜか面白いと思って1986年に行ってみました。素晴らしかったですね。そこのビーチリゾートの印象が強烈でした。
寺:それは遊びで?
星:ホテルを勉強していたので、大学を卒業してから観光地に、純粋に遊びに行くというのはなくなっちゃいましたね。ただあそこは、遊びに行きたい場所としても、すごく評価が高いです。20何年たちますけど、そこの素晴らしさというのは、竹富島にかかっているときにすごく意識したんです。それは、建物の統一性もそうなのですが、海の景色。海は自然じゃないですか。けれど、浜辺に建物をどーんと建てちゃうとか、人工物が多かったり。浜辺のこっち側を開発しすぎてしまう。シーサイドは浜辺、海、こちら側の自然というのをうまくレイアウトしていた。ですから、海も背中も全部自然というのがビーチとしてすごい開放感があった。無人島のビーチってああいうところだろうなと思いました。建物がないあの美しさは、大きな建物があって海があるという今までのビーチリゾートとの差が予想以上に大きかった。
寺:バリ島のオベロイってあるじゃないですか。去年、10年ぶりくらいに泊まったんですけど、何も変わっていなかった。リゾートとしてのくすみが一切ない。潔いというか、志があるというか。本当にすごいなと思いました。
星:ちゃんと維持されている。
寺:そうなんです。変にデザイン的なものに走ることもしていないんです。朝食を出すスタッフが30年くらい働いているおじいちゃんで、きちんとバリの昔のバティックを着て、すっとサービスをする。それがとても心地良い。今どきの遊び心とかはぜんぜんないんですよ。でも落ち着く。
星:大人のリゾートなんですね。
寺:どうしても、年月が経つと何か手を加えてしまうところが多いじゃないですか。日本のホテルもいろいろとリノベーションをしますけど、変えない潔さっていうのもとても大事だなと思うんですよね。
星:良さを維持しているんですね。今、何年ぶりって言いましたっけ?
寺:10年ぶり。
星:寺田さんにこういうことを言うと怒られちゃうかもしれないけど、私はね、変えていると思うんですよ。意外に変えているんだけど、評価されている良さを失わないで、10年間の変化をしているんじゃないかな。本当に変えなかったら、 古くさく思える機能がいっぱいあるのに、その機能だけはちゃんとアップグレードしている。
寺:聞いたところ、1年に1回は1棟をクローズして、リノベーションしているそうです。実は去年行って、今年行って、写真を撮ったんですよ。で、見比べてみたら基本はほとんど変わっていない。でもファブリックとかランプシェードとかを同じようなテイストの違うものに変えていました。
星:見える部分もそうなんだろうけれど、私なんかだと、細かいところだけど冷蔵庫を変えているんじゃないかなとか思っちゃう(笑)。
寺:オベロイには決して、ロマンチックさはないんです。リピーターもおじいちゃん、おばあちゃんが多くて。ところで、星野さんはハネムーンはどこに行かれたんですか?
星:私は学生時代に結婚しちゃったんで、ハネムーンは行っていないんです。ただ、仕事柄、旅行はすごくしたんです。一緒に。だから、結婚してからずっとハネムーンしていた感じ。
寺:思い出のリゾートはどこですか?
星:国立公園の中のホテルっていうのがすごくいいんです。環境は抜群だし、海外ではよく利用しています。日本では国立公園内にホテル、宿泊施設など一切建物がないんですよね、建てられない。アメリカの東海岸にあるスモーキーマウンテン・ナショナルパークという国立公園の山の上に、ルコンテ・ロッジというのがあるんですけど、ここがすごい。山のてっぺんに建っているんです。チェックインするのに駐車場に止めてから3時間歩かなければならない。
寺:そんな山の上にホテルにどうして?
星:そこのホテルの写真が素敵だったのと、山の上のアクティビティがおもしろそうだったから。駐車場から歩いて3時間だから昼までに入ってくださいといわれていたんだけど、私たちは足に自信があったので、駐車場に着いたのが1時30分とか2時ごろ。テクテク歩いていたんだけど、ぜんぜん着かなくて、そのうち雨が降ってきて、寒くなって、雪が降り始めた。そのころから、私たち夫婦は、道を間違えたんじゃないか、大変なことになってきたなと焦り始めて。二人で不安の中一生懸命歩いてホテルに着いたときの感動はすごかった。パッとホテルが現れたときの、生きている!というか、助かった!というか。
寺:サバイバルですね。
星:ホテルに入ったら、山の上なのに、私たちが泊まるコテージの暖炉に火が入っていたり、食事も呼びに来てくれて、しっかりとした食事が出た。日本だと山小屋しかなくて、横に向いて寝なければならないような部屋に押し込められるような、そんな山の中にあるのにです。自然とか景観とか、環境に対して宿泊施設の機能がしっかりしているんですよね。
ー 次の海外旅行はアイスランドで決まり???
寺:奥様も海より山なんですか?
星:そうですね、スキー部だったし。
寺:ビーチリゾートはロマンチックだし、ドラマチックですよ。シチュエーションとして美しいし。
星:スキー場もロマンチックなんですけどね。
寺:そうですか?
星:そう思いますよ。スキー場は幻想的な雰囲気があるじゃないですか。
寺:私はスキーをやらないので・・・。ビーチリゾートは素肌が見える!
星:ビーチリゾートは確かにそうだけど、スキーリゾートはねファッションに凝れるんですよ。いろいろなバラエティがあるし、バリエーションが豊富。ビーチリゾートは肌見えるけど、着られるものが限られるじゃないですか(笑)
寺:じゃあ、滑りながらあっ、かわいいなって、ルックスから入るんですか?
星:道具からですね。すごいスキー履いているよって。ギアの種類から(笑)
寺:そういう恋愛が始まるっていうのは、スキー場も多いんですかね?
星:多いと思います。
寺:経験あるんですか(笑)?
星:経験はないんですけどね…。
寺:奥様との出会いはスキー場ではないんですか?
星:違います。私、アイスホッケー部だったんですよ、男しかいない世界で。これが良くなかったですね(笑)。大学時代は体育会系アイスホッケー部だったので、スキーはしなかった。
寺:ところで今、個人的に行きたいリゾートはないですか?
星:寺田さんが世界中のリゾートについて書いていらっしゃいますけど、私は1年間時間がもらえたら、世界中のスキー場に行きたい。今、1年間60日を目標にしているんですね、スキーをする日を。昨年、年間61日という記録を作ったんですが。まあ、スキー場に行った日も仕事をしていますけどね。将来の夢というか、1年間52週、スキー場を転々としたい。地球上必ずどこかでスキーができるので、それを紹介する情報発信をしたいです。
寺:その中でもココは!というのはありますか?
星:パタゴニアに行ってみたい。南米は全く行ったことがなくて。チリやアルゼンチンとか。ニュージーランドとオーストラリアは行っていますし。あと、ヨーロッパ。オーストリアでは氷河を滑りました。アイスランドは行きたいですね。
寺:私もアイスランドに行きたい。
星:アイスランドはスキーとすごく幻想的な風景と、温泉があります。ブルーラグーン。これは一度は行かないといけないですよね。
寺:アイスランドは意外と温暖なので、そんなに雪がないようなことを聞いたんですけど・・・。川もあんまり凍らないので、オーロラが出たときに天空と川の両方が輝くらしいんです。水に映ったダブルオーロラの写真を見て、行きたいって。なかなかいい、おもしろいホテルもあるみたいなので、行ってみたいんですよ。