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彩り重ねるコレカラの人生
大人のハッピーエイジングメディア

OTONA LOUNGE

澤田 貴司(株式会社リヴァンプ 代表取締役 兼 CEO)渡邊 雅美(Mirroir 代表/株式会社ミロワ 代表取締役)

Text : Nino Sato
Photo : Masanori Akaishi

February 7th 2014

かねてから温めてきた対談企画がスタートします。私たちの周りにいるかっこ良くてチャーミングな大人たちの現在、過去、未来…、その生き様や考え方を垣間みて、Mirroirウェブの読者の皆様にもっと楽しい「今」、さらにポジティブな「明日」を思い描いていただけるようなものに繋がれば嬉しく思います。

今後、対談は各月のゲストが翌月にはお友達を招いてホストになり…というリレー形式で、展開していきます。各界より、様々な方々がご登場予定です。どうぞお楽しみに!

記念すべき第一回目は、Mirroir代表の渡邊雅美が数々の“チャーミングな大人”の中から、尊敬するおひとりである澤田貴司氏をお迎えしてお届けします。澤田氏は、「企業を元気に」をコンセプトに様々な専門会社による経営支援を行いながら、ファッションやレストラン/フード業界への進出、ホテル経営なども手がける株式会社リヴァンプの創始者/CEO。さて、どんなお話になりますか…(笑)

憧れる大人像とは

渡邊:澤田さんとは行きつけのカフェ/バーの常連さん同士で、時々お会いするうちに飲み仲間として親しくさせていただくようになって。今回、ミロワでこの連載をスタートするにあたり、第1回目はぜひ澤田さんから!と思ったんです。

澤田氏(以下、敬称略):プライベートでのお付き合いなので、こういうのはちょっと照れるね。

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渡邊:澤田さんは大人として、ビジネスや人生の先輩として憧れの存在なので、いつも素敵だな、かっこいいなと思っているのですが、澤田さん自身がそう思われるのはどんな方ですか?

澤田:すごいなって思っているのは、たくさんいるよ。たとえばイトーヨーカドーの現名誉会長 伊藤雅俊さん、セコムの創業者であり取締役最高顧問の飯田亮さん、ユニクロ柳井さんそして、シンガーソングライターの松任谷由実さんなどだね。生き方や人としての振る舞いがとても素敵だと思う。

それから、スターバックスの最高経営責任者のハワード・シュルツさんもカッコいいと思う。来日した際に食事をご一緒したんだけど、話を聞いてとても感銘を受けた。日本マクドナルド創業者の故藤田田さんも感銘を受けた一人。振り返ってみると経営者の方が多いよね。

渡邊:共通して、何かを成し遂げている過去をお持ちだからかもしれないですね。そういう方々の考え方や生き様に惹かれるのかしら?

澤田:そうだね。その方たちがどんな思いで会社を作ったりしたのかということにとても興味がある。どなたも立ち振る舞いがかっこいいし、謙虚だし、とってもチャーミング。そして何事にも一生懸命で理念がある…お金よりも、世の中を変化させたいというものすごい情熱がある。発する一言一言に迫力や重みがある。そんな方たちに共通する、“これ!”と決めたものへの信念やかっこ良さ、そういう部分に憧れるね。

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渡邊:松任谷由実さんとは長いお付き合いなんですよね?

澤田:大学3年の時に、友人宅の隣にご夫婦で引っ越してこられて、それでぜひご挨拶したいとお伺いして、それからのお付き合い。由実さんはとても謙虚。旦那様や周りの人を立てるし、料理の腕も抜群。人に尽くす心遣いを厭わないスタイルが、すごく魅力的な素敵な女性。

渡邊:松任谷さんの苗場のコンサート「SURF&SNOW in Naeba」も、澤田さんの提案がきっかけとか?

澤田:当時、コンサート場所を探していた由実さんに「若い子が興奮しちゃうような、楽しくってかっこいい場所、どこか知らない?」って聞かれて。「苗場しかないよ!」って答えて、すぐ下見に行ったんだ。最初は食堂で開催したけれど、今では冬の風物詩だもんね。

渡邊:その頃から楽しいことへの嗅覚が鋭かったんですね。それから年を経て、年齢を重ねた今だからこそ楽しいと思うことはありますか?

澤田:それが、過去の経験ありきで今が楽しい、という考え方はあまりないんだ。いつどんな時も、その時に楽しかったらそれでいいと思っていて、その都度ハッピーであれば良いというスタイルとでもいうのかな。

例えば今は、仕事以外では家族で過ごす時間が最高に楽しい。新しいメンバーも増えて、賑やかに多人数で食事をすることが今はいちばん嬉しい時間。

人生のキーワードは「家族」「仕事」「楽しさ」

渡邊:家族を大切にされている方って、素敵ですよね。では、澤田流“定番”の休日の過ごし方は?

澤田:自社店舗への視察や気になる店のリサーチに行くか、家族と過ごすかのどちらか。仕事と家庭が大好きだから、休日もそのどちらかがほとんどだね。家内とのデートは純粋にオフタイム。散歩して買い物して、2人の時間をゆっくり楽しむ。そして、夜はファミリーで集まって食事。これが僕の定番。

渡邊:充実のプライベートが目に浮かびますね。では奥様やご家族とは旅行などにも頻繁に?

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澤田:高齢の両親がいて、家内が「親が旅行しないのに自分たちだけ贅沢するなんて良くない」という考えなので、時間があっても近場で過ごすことが多いね。たまに行っても国内旅行。両親を大切にしてくれることはありがたいし、家族を身近に感じていたい思いは僕も同じだから、特に遠くに行きたいとは思わなくなったかもしれない。

渡邊:本当に素敵な奥様!では、今、近場(東京近郊)で澤田さんの理想とする場所やイベントなどはありますか?

澤田:うーん、思いつかないな。あったら作ってしまうかな。行きたい場所を探すというより、頭の中に「こういう場所があったらすごく楽しい!」っていうアイディアのタネがあって、それを実現するための場所を無意識に探していることが多いかもしれない。理想的なスポットについて考えると全てビジネスに紐づけてしまっているね。けれど、それは自分にとって楽しさを具現化する手段だから、仕事をしている感覚ではないんだよね。そう考えること自体がすごく楽しい。

渡邊:プライベートとお仕事、どちらも本当に大好きで大切にされているんですね。

澤田:本当にどちらからもハッピーをもらっていて、これ以上ない幸せを感じる日々だよ。自分のベースであり、守り守られる揺るぎない家庭と、信頼できる仲間と新しいものごとを生み出せる会社に関われている。幸せで、いつも感謝している。

渡邊:仕事と家庭が充実していて幸せと思えるって最高ですね!みんなそうなりたいと思っているけれど、シンプルなことほど案外簡単ではないのかもしれない。

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澤田:あとは友達。仲間と一緒に楽しく飲める環境があるのにも、救われているね。

渡邊:それ、すごくわかります。いつも素敵な仲間たちと幸せそうに飲んでいる澤田さん、素敵ですよ(笑)では、家庭と仕事と仲間に満ち満ちている現在ですが、戻れるなら戻ってみたいと思うターニングポイントは過去にあったりします?

澤田:それもないかな。仲間とお酒を飲みながら、懐かしい話を…ということはあるかもしれないけれど、ジョークの範囲だね。真剣に過去に戻りたいと考えることはまずないな。

渡邊:その都度、選び取ってきたものを信じ、満足できているということですね?

澤田:そう。自分の選択を信じているし、それよりも今と未来へ向けて一生懸命生きていたほうがずっとクリエイティブでしょう?生きてきたどの瞬間も面白かったし、思い返しても後悔は欠片もない。引きずると失礼だよね、こんな楽しい人生を送らせてもらっておいて。

仕事では思い悩みながら前進する

渡邊:人生に悔いなし!と言い切るかっこいい澤田さんですが、今までにきっとたくさんの決断をしてきたと思います。判断することってプレッシャーがかかるけれど、澤田さんはさっと決断できるタイプ?

澤田:それが、決断するまでかなり考え込む性質なんだよね。寝ても覚めても考える。最終的には直感が勝るけど、そのタイミングまではとことん悩む。

渡邊:それはちょっと意外でした!今までに最も深く悩んだのはどんなことでした?

澤田:転職だね。起業する前に2回ほど会社を変えているんだけれど、伊藤忠商事を辞めてユニクロに転職する時はかなり悩みましたよ。当時のユニクロはまだ山口県にある企業で…伊藤忠商事に居続ければ、ちゃんとお給料がもらえるわけでしょう。2人の子どももまだ小さかったし、マンシションも購入したばかりで、いろいろなものを背負っていると考えて、本当に悩んだ。ユニクロに移ってからも社長になる、ならないと悩み、辞める、辞めないと悩み。けれどいずれの場合も最終的には、新たなチャレンジへの期待が膨らんで、環境を変えることを選んだ。

渡邊:転職(起業)が最大の転機だった、ということですね。確かに大きなことですよね。それ以外の人生を変える大きなきっかけになるような出来事もあったりしました?

澤田:結婚したことかな。家庭を持ち、子どもができると人生の意義が一変する。それと、結婚直前に実父を亡くしたこと。自分が母親や家族を守らなければならない、って強く自覚した。家族に関係することが大きいね。やっぱり仕事と家族。そして、起業したことも大きな転機だったと思う。

渡邊:最初の会社が、企業再生投資ファンドのキアコンですよね。

澤田:気合と根性で作った会社ね(笑)たたむ時はやはり悩んだね… でも中途半端な気持ちでズルズルと考えていたら、一緒に働く仲間やステークホールダーの皆さんに悪影響を与えてしまうと考え会社をたたんだ…。そのあとに今のリヴァンプを立ち上げるわけだけれど、会社っていうものは常に変化しているから、悩みの種は尽きないよね。

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渡邊:笑顔の下で悩み、熟考する。経営者は孤独ですものね。澤田さんはどんなこと(場面)で一番考え込むのかしら?

澤田:会社を元気にすることで社会に貢献する、なんて言っておきながら、立ちゆかない会社が潰れる現実に直面したときは本当に辛かった。経営はすべてがうまくいくものではないし、大怪我する前に判断しなければならないことも多々ある。仕方ないと言えばそれまでだけれど、信念とは真逆の行動をとらなければならない場面に直面することもある。

理屈と感情の競い合いは、時としてキツイことも多いよね。どんなプロジェクトでも進行するにつれ、最初の思いとは異なっていくこともあるし、当初立てたシナリオと全く異なって行くこともある。

そして人材も同じ。「こいつだ!」と思っても、違うこともある。だから、明るい未来に向かうために何をすべきか、よく考える。そうやって色々なことが変化していくのに付き合い、関われることは面白くもある。色々な判断を下すときは常に自分と、向き合うことが必要で時として自分の利害との戦いにもなる。何が本当に正しいかを突き詰めることに醍醐味を感じることもあるよね。

渡邊:例えばスティーブ・ジョブスなら、頭の中にプロジェクトの具体的な完成図があると聞きます。足りないところに人なりものなりを集め、コンプリートさせるスタイルだそうですが、澤田さんはどうですか?

澤田:ケースバイケースかな。ジョブスは本当に天才で比較することなど出来るはずも無い。

僕はコンサル、事業会社経営、小売店舗展開などいろいろ手がけているので色々なパターンがあるよ。でも、仕事をコンプリートするために色々な不足箇所を埋めていくのは同じかも知れない。

たとえば今回、六本木ヒルズに「エッグセレント」っていう朝食専門レストランをオープンしたんだけれど、これは28歳の女性のアイディアを形にしたもの。将来を担う若い層のパワーとアイディアには興奮させられる。そこで僕は僕のできることで彼女らを支えて、彼女たちは未来に向かって実績を積んでいく。将来、彼女たちと一緒に美味しいお酒が飲めそうでしょ?今だけでなく、5年10年先の未来もとっても楽しみだなんて、嬉しいことだよね。

渡邊:やる気とパワーがある、魅力的な人材に囲まれていると、たくさん刺激を受けますね!

澤田:それはあるね。勿論。自分でもまだまだ何かできるのではないか…なんて考えちゃう(笑)でも直接プロジェクトを自分が手がけるというよりも、今は僕が若い彼ら、彼女たちを支え、みんなが思う存分に活躍できるプラットフォームの整備に力を入れたいと思い、実際にそうしている。

渡邊:サポートに徹する姿勢に器の大きさと大人の本質を感じます。今度、私もプレゼンに伺おうかしら(笑)

それにしても「大人」という単語に含まれるエッセンスは様々なはずなのだけれど、世の中では意味がもっと平たくなっている気がして。いろんな大人がいて、いろんな生き方や個性があっていいのに、日本人はくくりたがりますよね。

澤田:そうだね。俗に言う「大人像」にこだわっちゃダメだと思うよ。それは意識して演出するものじゃないからね。当然、年齢的な分別は必要。けれど、もっと自然に、内側から滲み出るものだと思う。大人だの子どもだの、産まれたのが先だから立場が上だの、関係ないでしょう?それぞれに個性や役割がある中で、ざっくり「大人だからどうのこうの」とくくってしまう風潮はおかしいと思うね。

さっき僕が名前を挙げたみなさんは、そういう“あるべき論”は振りかざさない人たちなんだ。いつまでも無邪気で、周りなんか気にしていないんだけれど、持っている夢や備わっている人間性に周りが共感している。その姿勢を貫く生き方に憧れるよね、そういう「大人」なのではなくて、そういう「人間」になりたい、と思っている。

渡邊:澤田さんはどんなに偉くなっても、約束は「約束したその順番で守る」と以前、仰っていましたね。そして、一度した約束はパワーバランスなんかでは崩さない。どんな相手にも対等に接っしきる人間性は、確かに、大人風の人では成し得ませんね。

「上下」に込められた意味

澤田:先日、書道家の岡西佑奈さんの個展に出かけたのね。「月と太陽」「大小」など漢字に込められた陰陽をしたためるというのが全体のテーマだったんだけれど、その中に印象的な言葉があって。「上下」という作品でね、ご本人に聞いたら「澤田さんがお話していたエピソードをもとに書きました」と。以前、僕が会社のみんなに話していた、ともにビジネスで協力し合う仲間への信条を耳にして、インスピレーションが湧いたそうなんだ。

「上下」という言葉は、縦書きにすると当然「上」と「下」が上下関係で並ぶよね。けれど横倒しにすると全くの左右対称になって、横に並んで、まったくフラットな状態になる。

渡邊:わ、本当だ!上も下もなく、開かれた印象の記号に変わりますね。

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澤田:見かけはまさしく上下関係があるように見えるけれど、実は見事に調和が取れていてフラット。その本質があるから「上下」が成り立つんだ、と。僕が大切にしている考え方や仲間への思いと、見事に同じだったんだ。この書を見た時はすごく嬉しかったね。

渡邊:素敵。人間関係のセオリーを打ち破るお手本ですね。では、社会が煽る普遍的なあるべき論や、ルールまがいの一般論に乱されないための秘訣を教えてください。

澤田:目に見えない価値観や考え方を大切にすること。誰かがすでに言ったことや決めていることに従うことが美徳とされがちだけれど、それはただ枠にはまっているだけ。生き方としてはすごく滑稽だから。

渡邊:はい!最後に、Mirroirの読者に向けて一言いただけますか。

澤田:年齢や時代は関係なく、あなたらしく、本当に好きなことを選んで生きてください。嫌なこと、挑戦しても駄目だったことはデリートできるし、軌道修正はいつでもできる。そのとき、そのときを一生懸命に大事にしてほしい。人生はハッピーでないとね。

澤田 貴司
Takashi Sawada
株式会社リヴァンプ 代表取締役 兼 CEO
1957年石川県生まれ。上智大学理工学部卒業後、1981年伊藤忠商事株式会社入社。化学品営業、流通プロジェクトに従事。イトーヨーカ堂とセブンイレブン・ジャパンプロジェクトに参画、米国セブンイレブンの買収に携わる。
1997年株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)入社。常務商品本部長を経て、翌年副社長に就任し営業部署の責任者としてユニクロの急成長に貢献。その後、株式会社キアコン設立、代表取締役就任。そして2005年に株式会社リヴァンプを設立。
http://www.revamp.co.jp/info/managers/
渡邊 雅美
Masami Watanabe
Mirroir 代表/株式会社ミロワ 代表取締役
1971年横浜生まれ。幼少期をロサンゼルスで過ごす。成城大学卒業。大学在学中より光文社JJ編集部でファッションや美容の企画/編集に携わる。その後、再びロサンゼルスに留学、G.I.A.(米国宝石学会)で宝飾の鑑定とデザインを学ぶ。ジュエリー、アート、ファッションの仕事に従事し、パリ、ロンドン、ブリュッセルと長いヨーロッパ生活を経て、2010年にアラフォーに特化したイベント/企画集団“Mirroir(ミロワ)”を創業。昨年、株式会社ミロワを設立。現在、全力で大人文化を研究中。