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愛される店

CAFFE ANTOLOGIA 代々木公園

Text : Masami Watanabe
Photo : Kumiko Suzuki

CAFFE ANTOLOGIA 代々木公園
柳生真志さん

素敵なご近所さんと魅力的な大人が集まる富ヶ谷に佇むカフェ。オーナーの柳生さんは腕のいいバリスタでもあり、前を通ると美味しいコーヒーの香りがいつも漂っています。常連さんに愛され続けるお店の秘密、そしてこの場所が素敵なご縁を結んでくれるという噂の真相についても伺ってみます。

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コレカラージュ(以下、コレ):今年はお店のオープンから10周年ですね。おめでとうございます!柳生さんのお店には本当にハートフルで、バラエティに富んだ面白いお客様が集まりますね。私自身もご縁があり、頻繁に訪れていますが、いつもそう感じます。

柳生さん(以下、敬称略):ありがとうございます。本当にお客様には恵まれていると思いますし、そう言ってもらえるととても嬉しいですね。

コレ:皆さんそれぞれに個々でお店に通い始めて、いつの間にか常連さん同士で仲良くなってしまう。柳生さんはそれとなく人を繋げることに長けていると思います。今では、常連さん同士で旅行にも出かけるほどの仲良しさんになっているエピソードも少なくないですものね。

柳生:ここに集まるお客様は、皆さん、良いオーラがあるというか、いいカードを引ける人たちだと思うんです。だから、そういう人たちが新たに連れてくるお客様もやっぱり、いい“引き”のある人たち。僕は、なんとなくそういう良い人たちをそれとなく紹介したくなる性分というか、何かしたくなっちゃうんです。もちろん、相手を見て「そっとしておいて・・・」というオーラを出している人にはそんなことはしませんけどね(笑)。

コレ:日々多くの、色々なタイプのお客様がカフェのドアを開けて入っていらっしゃると思いますが、柳生さんは何か感じたりするのかしら?

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柳生:なんとなくプラスの気の人か、マイナスの気の人かくらいは直感的にわかるかな。おそらくね、飲食店をやっている方はその部分の直感って、それぞれに持っていると思いますよ。

コレ:ここにコーヒーやお酒を飲みに来て、自然と良いご縁に繋がったり、柳生さんを介して魅力的な人と出会ったり、このお店では色々な化学反応が起こっていますね?

柳生:つい最近も、ここで出会って結婚したカップルがいます。新郎は、会社全体でみんなが常連で、彼自身はその日が数回目の訪問だったんだけれど、感じのいい青年。その日も会社のみんなと飲みにきてくれていたんですね。そこへ偶然、その夜にひとりで飲みに来ていたのが新婦。彼女は、この近くで編集の仕事をしている常連さんで、とってもさわやかな女性。2人はその夜にここで初めて会うんだけれど、すぐに意気投合したんです。でね、そのまま数ヶ月後には婚約しちゃった!
あっという間に子供もすぐに授かって、まさにハッピーカップルですよ。まぁ、今だから言えますけど、僕はあの時に2人は結ばれるんじゃないかと密かに直感はしていました(笑)。

コレ:素敵な話ですよね!私も実はそのカップルは存じ上げていまして、ここの常連さんで結婚式に招待されたうちのひとりでしたが、本当にぴったりのふたり。出会うべくして、ここで出会っていますね。お互いにビビッとくるというのはあぁいうことなんでしょうね、きっと。柳生さんは彼らの結婚式では、2人のキューピットとして準主役でしたものね!(笑)

柳生:キューピットだなんて、そんな(笑)。でも、ここでの出会いが誰かの人生の重要な何かに繋がってくれたことは純粋に嬉しい。マスター冥利に尽きます。

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コレ:実はほかにも、お店への来店が何かしらのきっかけで結ばれたカップルが数組いらっしゃいましたね?

柳生:はい。某有名企業の副社長さんも最終的に結婚に至ったきっかけはここでの一夜に由来していると聞いていますし、僕の中ではこの店を始めてから何かとキーマンとなっている北島昇さんも奥様とお付き合いするきっかけはこの店だったようです。

コレ:皆さん、この場所での何かがきっかけでとても幸せになられていますね。
年齢もやっている仕事や職種も全くバラバラな人が集まって、柳生さんのさじ加減でいいタイミングでそれぞれを繋いでくださっているから、そういった良縁に発展される方が多いのでしょうね。恋愛や結婚だけでなく、ビジネス的にも発展されていく方も沢山いらっしゃって、まさに柳生マジック!(笑)

柳生:いや、皆さんが素敵なだけです。だから、僕もそういう風に突き動かされる。ふと思ったんですけれど、ここの常連さんって人の悪口を言う人がいないんですよ。気持ちがきれいで、いい人ばかり。だから僕は9年も店を続けて来られたのだと思っています。

コレ:そもそも、柳生さんはどうして飲食の道に入られたの?ここをオープンするきっかけを改めて教えてください。

柳生:学生時代のアルバイトから飲食系に携わっていたので、社会人になるときもなんとなく進む方向性は飲食業界かなとは思っていました。たまたま先輩に声をかけてもらって、ドナテローズというアイスクリーム&カフェの店を経営する会社に就職したのが本格的なキャリアの始まりです。いくつかの店舗を任されて、店長をやったりしている中で、あるとき自分はこのまま一生雇われていくのか、それとも自分の店を持つのか、という壁に突き当たったんですね。
コレ:それで独立する道を選ぶのですね?

柳生:すぐに独立したわけではなかったけれど、27歳のときに3年以内に自分の店を持つと決めて、それを目標に資金を貯め始めました。元々、嫁の実家が飲食店を経営していたし、現在では義理の弟も代々木上原でオーセンティックなバーを経営していて、なんだかんだと水商売の一家なのです。それで31歳のときに、この場所で開業をすることになったわけです。

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コレ:そういえば、柳生さんがドナテローズの時代に、私の友人が柳生さんの下でアルバイトをしていて、繋がっていたというサプライズがありましたよね!私は当時の柳生さんとは面識もなかったですが、友達伝いに話は聞いていたという、なんともびっくりな事実が20年以上の時を経て判明したという(笑)。

柳生:それも不思議な縁でしたね。それがわかった後に、そのお友達も呼んでここで飲みましたよね。懐かしい話で盛り上がった(笑)。

コレ:そんなこんなで私自身も柳生さんとこのお店とは不思議な繋がりがあるわけですが、柳生さんがお店をオープンされた当初はどんな感じだったんでしょうか?今のようなハッピーオーラの面々が集まり出したきっかけは何かあったのかしら?

柳生:普通、自分のお店を始める時はある程度お客様を持っていてスタートさせることが多いと思うんですが、僕の場合は全く0からのスタートでした。この場所を選んだのも、自宅が近所でなんとなくここを見つけただけ。オープニングも、ごく内輪の知人や先輩方に祝ってもらったくらいで、ニュートラルに淡々と始めました。最初はアルバイトも雇ったりしていて、もっとビジネスライクだったんですけれど、なんだか成り行きで、こうやってひとりで切り盛りするスタイルに落ち着いてしまいました(笑)。

コレ:では、よいお客様の連鎖はそのごく内輪から始まっているんですね?だって、ここにはビジネス界の大物や著名なクリエーターなど、様々な方がいらっしゃいますものね。常連さんはあまりそういう“どこの誰”とかを気にする方が少ないから、私もいつもそういうことを意識せずにここでは親しくさせて頂いていますが、あらためて考えるとすごいですよね。それは柳生さんの“引き”なのでは?

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柳生:僕の店ですから確かに僕が何かしらの軸になってはいると思いますが、お客様同士の“引き”がすごいのだろうなって思います。そして、この連鎖の元に、先程も名前をあげた北島昇さんの存在は大きい。彼とは、15年くらい前に出会っているんですが、最初はあまり仲良くなかったのね。僕のキャリアから、あるアイスクリームショップの立て直しの依頼を受けて、行った先の責任社だったのが北島さん。あるフランチャイズの店舗で、北島さんは本部から来ていた責任者でした。真剣に意見を交わしてつき合うにつれて、お互いに打ち解けて、どんどん仲良くなっていきました。それからずっとお付き合いが続いていて、北島さんはいろいろな方を僕に引き合わせてくれることになります。彼自身もその後、あのコールドストーンアイスクリームの副社長になったり、活躍も目覚ましい。彼の活躍はすごく刺激になりますね。そして、北島さんは食事の帰りにここに来たことがきっかけで素敵な女性と結婚しました。そういうのもとっても嬉しい。

コレ:なるほど、北島さんがキーパーソンなのは納得ですね。私も存じ上げていますが、彼はラテン系でとってもおおらかな方で、確かに何かを持っていますね(笑)。

柳生:北島さんは、この店でも時々お手製の美味しいメキシカンを差し入れてくれますが、それが発展して今度レストランをオープンすることになったんですよ。TACO RICOという、オーセンティックなテイストのタコスショップをね。益々、これからの躍進が楽しみです。

コレ:北島さんのメキシカンは確かにとっても美味しくて、私も大好きです。それにしても、このお店は、昼間と夜とで全然マスターの雰囲気も違いますし、お店の営業スタイルも違いますね。何か意図しているんでしょうか?(笑)

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柳生:昼間はいらっしゃるお客様の人数も多く、ランチの営業もあるので黙々と作ってサーブしていますね。ひとりでやっているから、サクサクやるしかない。逆に夜になると、ほぼ一見さんは入って来ないですから(笑)。だから、夜のほうが僕もお客さんと話す余裕もできるし、話せるお客さんしか入って来ないし。飲食店としてはもっと間口を広く営業したほうがいいのでしょうけれどね(笑)。

コレ:勝手なことを言わせていただければ、そのスタンスだから夜はあれだけの常連さんが集まってくるんだと思いますよ。時には、常連さんがテーマを決めてここで会を開いたり、試食や試飲会をやったり、楽しい会がたくさん開かれますものね。同年代ばかりが集まると、なんとなくBOOWYがかかって自然と80年代の音楽と話で盛り上がったり(笑)。さすが、パワースポットです!

柳生:BOOWYナイトは盛り上がりますよね。みんな、昔に戻っちゃう(笑)。昼間のお客様も素敵な方が多いですが、特に夜はプライベートタイムとしてここにいらっしゃっている方が多いから、他の人の肩書きで相手に興味をもつのではなく、本人の人柄に惹かれてここで出会い、会話して親しくなる。それって人付き合いの基本のようでいて、最近はそういう安心して過ごせる場所が少ないのかもしれません。だから、僕の店はいい意味で安心できるスペースなのでしょう。それほど広くもないしね。

コレ:確かにホッとする空間ですね(笑)。

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柳生:僕ね、いい人はやっぱりいい顔つきをしているなって思うんです。そして、そういう人はきれいな言葉を発する人が多い。僕はここで、大好きな常連さんたちの発するそういう美しい言葉を聞いて浄化されている気がしています。完全にお客様に育てられていると思いますよ。5年、10年という月日の中で、皆さんの会社やビジネスが、また皆さん自身がどんどん成長して大きくなっているでしょう。それを見ていることは、ものすごく励みとなっていますし、自分自身も一緒に成長していたいなと思います。だから、やっぱり僕や店がパワースポットなのではなく、お客様たちがパワースポットなんだと思いますね。

コレ:わ、いいこと仰られる!(笑)
あと、柳生さんっていつも保湿を欠かさないですよね?顔も、手も。カサっとしていると、艶々しなさいと言われるし、皆さんにも言っている印象があります。それはどうして?

柳生:さっき、いい人はいい顔していると言いましたが、そのときのその人の肌の艶って、その人のオーラに通じるというか、コンディションが出ていると思うんですね。だから、僕自身もできるだけいつもぴかぴか、ツヤツヤしていたい(笑)。それを親しい常連さんには伝えています。

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コレ:なるほど。ハッピーオーラを出すには“ぴかぴか”、“ツヤツヤ”が大切なんですね(笑)。実践します!

カフェ・アンソロジア
CAFFE ANTOLOGIA
東京都渋谷区 富ヶ谷1-12-7 タムラビル1F
Tel: 03-3485-7865