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OTONA LOUNGE

吉田 ユニ(アートディレクター)渡辺 潤平(コピーライター)

Text : Masami Watanabe
Photo : Kumiko Suzuki

March 27th 2015

かっこ良くてチャーミングな大人たちの現在、過去、未来…、その生き様や考え方を垣間見ることができ、Qorretcolorageウェブの読者の皆様にもっと楽しい「今」、さらにポジティブな「明日」を感じて頂く対談企画です。

毎月のゲストが翌月にはお友達を招き、ホストになるリレー形式で展開していきます。
今回は、前回のゲスト、渡辺潤平さんがアートディレクターの吉田ユニさんをお招きしてお届けします。

吉田ユニさんは、様々な広告のデザインを手がける人気アートディレクターです。きっとラフォーレ原宿、メルセデス・ベンツ ファッションウィークのキービジュアル、木村カエラさんのCDジャケットなど、皆さんはどこかで彼女の作品に触れているかと思います。若くして独立し、注目のビジュアルを次々に世に送り出しているユニさん。彼女がどんな子供時代を過ごし、どんな風に仕事に向き合っているか、謎の素顔に迫ります。

いつだって自然体

渡辺潤平さん(以下、潤平):ユニちゃんと僕は、元々、仕事を通じて知り合ったんだけれど、お互いに若くして独立したり、共通点があったのですぐに意気投合しましたね。

吉田ユニさん(以下、ユニ): そうですね。仕事のやり方としては少し違うタイプかもしれないけれど、(独立の時期など)私の少し先を行く潤平さんはいつだって頼りになる先輩です。

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潤平:ありがとう。僕にとっても、ユニちゃんはなんだかいつも気になる存在。作品を見ると刺激をもらうし、会えばいつも変わらないユニちゃんにホッとする(笑)。
ところで、事務所を引っ越したんだね?すごく気持ちのいい空間!

ユニ:そうなんです。前のところが少し手狭になったので、1年前に移りました。前のところと基本のイメージは変えず、内装やインテリアがヴィンテージっぽいところが気に入って、ここに決めました。

潤平:日当りがとってもいいですね。

ユニ: そうなんです!日当りが良すぎて、午後になると眠たくなっちゃう(笑)。

潤平:今回、この“Otona Lounge”の対談が僕に回って来て、次に誰に繋げようかと考えた時に、あえて僕の回りでいちばん大人っぽくない人にバトンを渡そうと思いました。それで、すぐに浮かんだのが吉田ユニちゃん!(笑)
・・・とはいえ、初めて会った時から考えたらずいぶんと大人になったね。

ユニ: そうですね、大人になりました・・・年齢だけは(笑)。最初に会った時はお互いに20代でしたからね。

潤平:ユニちゃんは、僕から見るといつも自然体で、決して無理はしないように見える。でも、好きなことにはいつも純粋に打ち込んでいる印象で、そういうところがスゴイなと思う。それは、何か意識をしてそうしているのかな?

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ユニ:うーん、子供の頃からずっとそうでしたね。家族や友達には小学生の頃から全然変わらないってよく言われます。「これが好き!」と思うと、全てを忘れてそこに全力を注いでしまう(笑)。

潤平: 大人になるって、歳を重ねるにつれて何かが変わっていくと思うんだけれど、ユニちゃんの場合は今までどんな変化があったんだろう?つまり、10代の時と20代、そして30代の今ではやっぱり考え方とかが変わることも当然あると思うのだけど。そのあたりはどうなのかな?何かユニちゃんなりの変化を経ての今なの?それとも、ありのままに来たら、今に至ってしまった?

ユニ:あまりそういうこと自体を考えたことがないですね。わからないまま、気がつかないまま、ここまできてしまったという気がします。良いのか悪いのは、思い出す限りでは小学生のときから基本的な性格や性質はほとんど変わっていなくて、ありのままに過ごして来たら、こんな風になってしまったということかな、と。

潤平:なるほどね。ホンモノの自然体なんですね、ユニちゃんは。そもそも、デザインを志したきっかけみたいなものは何だったのですか?

ユニ:子供の頃から絵を描いたり、工作をすることが大好きでした。おもちゃも、自分で作ったりしていましたね。小学生の時に、一度お誕生日プレゼントに電動ノコギリが欲しいと言って親に驚かれたこともあるくらい(笑)。それで、女子美術大学付属の中学校に進学して、そのまま高校、大学へと進みました。

モノ作り大好きの永遠の少女

潤平:中学から美術系だったんだね。具体的には学校ではどういうことやっていたの?

ユニ: 中学、高校時代はずっと絵画コースを専攻していて、油絵や木炭デッサンをしていたんですけれど、大学では就職のことを考えたり、新しいことがやってみたくてグラフィックデザインに転向しました。それまではパソコンをあまり使ったことがなかったので使ってみたかったし、そこに美術の要素を取り込むことをすごくやってみたくなったんです。

潤平:ちなみに、部活は何かやっていたの?

ユニ: 弓道をやっていました。

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潤平:え!意外!渋いチョイスだね(笑)。

ユニ:元々アーチェリーや射撃をやってみたいという願望があって、たまたま学校に弓道部があったので入りました。卒業してから全然やっていないのですが、最近またちょっとやりたいなぁなんて思ったりします。何なのでしょう、的を狙いたい欲求が・・・(笑)。

潤平:じゃあ、袴とかを着て練習していたの?

ユニ:袴は着ていません。弓道には型みたいなものがあって、毎日ひたすらにその練習でしたね。棒にゴムがついた道具を使って、弓を引く。このスタイルをちゃんと会得しないと、ほっぺたがスレて痛くなっちゃうんです。

潤平:それは、ユニちゃんのほっぺたが丸いからではなくて?(笑)

ユニ:それはあるかもしれないけれど、一般的に・・・です(笑)。

潤平:それは冗談だけれど、基本的にひとりで何かをすることが好きだし、得意としているタイプなんですね。

ユニ: 団体スポーツは苦手です。ひとりで黙々と何かをするタイプで、そのほうができることも多いんじゃないかなと思っています。

潤平:協調性とかの問題ではなく、その人の集中力の持っていき方とか、力を発揮する時の心地よさが自分一人の空間や世界でないと・・・というタイプってありますね。確かに、ユニちゃんは完全にそっちのタイプに見える。

ユニ: 子供の頃から、ひとり遊びが得意だったし、好きでしたね。だからといって友達がいないわけではなかったし、友達と遊ぶ時はそのときの遊び方があって楽しかった。でも、一人で何かに集中して没頭する時間がすごく心地よく感じていたし、大好きでした。

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潤平:では、今こうしてここでやっている仕事やこの仕事場はひとり遊びの集大成だよね?この事務所はひとり遊びのお城!(笑)

ユニ:そうなんです。子供の頃のひとり遊びの感覚と、今やっている仕事はかなり近いものがありますね。昨年11月にラフォーレ原宿で個展を開催した際に、小学校時代の友人たちが観にきてくれて、みんな口を揃えて「全然変わらないね」って(笑)。

潤平:それっていいことですね。自分の型を知っていて、自分の気持ちのいいポイント、気持ちよくいられる場所を知っているということだから。以前、フジテレビの「ストロベリーナイト」という番組のポスターを僕とユニちゃんと一緒に製作した際に、 印象的なことがありました。それは、女優さんのお腹から腑みたいにイチゴが飛び出している、ちょっとグロテスクでショッキングなビジュアルだったんだけれど、普通はそういう広告の製作現場(撮影現場)でアートディレクターはカメラマンに指示を出したり、全体を引いて見ている人が多い中で、ユニちゃんは撮影に使うイチゴを潰すことに夢中になってた。その微妙な潰れ具合に、ものすごく集中していたんです。ユニちゃんのモノ作りや作品づくりの本質や大切なポイントはそういうところにあるんだなと、当時とても印象的だったのを覚えています。だからこそ、あのポスターはすごく完成度の高いものに仕上がって、僕自身も大好きな仕事のひとつです。

ユニ:えー、そんなことありました??覚えてない(笑)。でも、確かにそういう作業が好きだし、リアルを追求することにはかなりこだわっているかもしれませんね。

潤平: 仕事のキャリアを重ねてきて、僕はマスの方向をつねに見ているというか、いかにダイナミックにキャンペーンをまわしていくか、ということに重きを置いている気がする。一方で、ユニちゃんはひとつのものをいかに精度よく突き詰めていくか・・・というスタンスなのかなと思う。一緒に仕事をしたいんだけど、僕の仕事に誘っても、どうやって大きく仕掛けるかという考え方だから、ユニちゃんのフラストレーションが溜まるのではないかと思って、ついつい声をかけそびれてしまう。

ユニ:作品を見るとそういう印象を持たれてしまうかもしれないけれど、ダイナミックなことにも興味はあります。フラストレーションは溜めませんから、ぜひ声をかけてください(笑)。

潤平:わ、そうなの?では、今度ぜひ(笑)。でもね、小さく丁寧に作った結果、それがしずくのように素晴らしい完成度に仕上がるユニちゃんの作風は本当に素敵だよね。僕はいつもそんな風にユニちゃんの作品を見ていました。11月の個展を見たときもそうだったし。

ギャップ

ユニ:自分ではよくわからないのですが、作品と実際の私のキャラクターにギャップがあるとよく言われます。

潤平:確かにユニちゃんはギャップがあるように見えるかもね。それはいい意味で、魅力でもあるんだけれど。一般的に、ユニちゃんという人=ほわっとおっとりしているという印象を持つと思う。でも、作品を先に見ると、アグレッシブで肉食、動物的な感じに見えたりもする。 かわいいのに、攻撃的・・・相反するものを持ち合わせているから、そのギャップがすごいんだろうね。話を聞けば、アーチェリーをやってみたいとか攻撃性を感じられる要素を持ち合わせていて、納得もするけれど、人としての表面にはそれは出ていないからね。ギャップは魅力ということで、僕はとてもいいことだと思ってて。

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ユニ:ありがとうございます(笑)。

潤平:でもね、一方で、僕はユニちゃん本人と作っている作品をほぼ同タイミングで知ったので、このキャラクターが成功を重ねて大きくなるにつれて、どんな風に変わっていくか、実は興味があったし、いつも気になっていました。

ユニ: あら、そうなんですか!で、私はどんな風に変わったかな?

潤平: いや、変わっていないね(笑)。でも、それってすごいと思う。変わらないことは強さでもあるし、そこが魅力。

ユニ: だって、急に変わるほうが怖いでしょう?(笑)

潤平: 確かにね。もはや、ユニちゃんが変わってしまったら怖い(笑)。でもさ、いつも変わらずふんわりしているように見えるけど、現場では結構はっきり言うよね?言うべきことはしっかり言うという。そこはすごいなって、僕は若き日のユニちゃんからその大切さを学んだんですよ。

ユニ:あはは。思ったことはしっかり言うタイプかもしれませんね。

潤平:変わらないユニちゃんと言えば、ある日、車の運転中にラジオからユニちゃんの声が聴こえてきて、最後まで聴いていたけれど、本当にいつも通りのユニちゃんで超自然体だったっていう・・・(笑)。その時に、この人はずっとこのまま歳を重ねていくんだろうなって思ったことがある。その強さの源はどこからくるの?いつもブレないでいられるのはどうして?何か自分に課している規律とかルールはあるのかな?

ユニ: 妥協はしたくないとは思っていますね。それは仕事ではもちろん、どんな時もいつも思っています。おそらく昔からで、性格的なことが強く影響していると思うのだけれど、一回向き合ったことからは手を抜かないし、目標に向かって、目的を見失わないようにしているかな。 ひとつのプロジェクトを形にしていく中で、必ず目的があると思うんですけれど、プロジェクトが進行していく中でいろんな人の意見で内容が変わっていくこともあって、そうなると目的がブレそうになる。みんなの意見をただ取り入れるということは、目的がブレて中途半端なものになってしまうことが多いから、私はそこがブレないために、目的を達成するためにどうしたらいいかという物事の見方をするようにしています。それはたとえ、ビジュアル的には最初に考えていたものと違う結果になったとしても、目的だけは変わらないように、視点と思考を徹底するようにしています。

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潤平: なるほどな。その徹底ぶりは、仕事の姿勢にも作品にも確かに強くは反映されていますね。11月の個展でも、ものすごくそれを感じて、実はちょっと嫉妬したくらい。隅々にまで、ユニちゃんのこだわりが出ていたし、観ているだけで準備が楽しかったんだろうなとか、面倒で大変なことをしているんだろうなって色々と想像しました。きっと周囲を巻き込んだのだろうとか、巻き込まれた人たちはひーひーしていたんだろうけれど、みんなユニちゃんに巻き込まれてもいいと思っていたのであろう、とかと感じました。
ユニちゃんの周りにはいい人が集まり、ユニちゃんにはその人たちを巻き込む力があると思うんです。巻き込まれた人たちはみんなクオリティを追求する人たちで、だからユニちゃんの仕事はさらに良くなるし、完成度も高まる。ユニちゃんはそうやって、今とっても良い渦の中にいる人なんだろうなって思います。

ユニ: わー、そんな風に言っていただけて嬉しいです。個展をやってみて、あらためて自分の作品をじっくりとみつめてみて、自分は周囲の人たちにたくさん助けられ、素敵な人たちに支えてもらっていることに改めて気がつきました。感謝しかないです。昨年の個展は、そういうことを心から実感できるよい機会になりました。

ひとりで黙々とリアルの追求

潤平:唐突だけど、趣味は?

ユニ:うーん、トランプかな。 神経衰弱が大好きなんですけど、誰も一緒にやってくれない・・・(笑)。

潤平:だって、ユニちゃんは強すぎるもん!なんか、不思議な力を持っていて、魔物的に強いんですよ。だから戦った相手が劣等感を覚える。僕ももうやりたくないです(笑)。

ユニ:でもね、最近は弱くなりました。年齢とともに衰えている気がします(笑)。あとはね、折紙も大好き。友達の子供とよく一緒に遊びますよ。いろいろなものを作って、披露して、作り方を教えて、一緒に作って・・・みたいに。

潤平: 外で何かしないの?例えばマラソンとか、流行っているじゃない。

ユニ:元々、あまり外出もしないですし、インドア派だからスポーツもしないですね。あ、たまに縄跳びはします。昔から縄跳びは大好きでした(笑)。

潤平:やっぱり、ひとりで向き合うものが好きなんだね。そして少女時代に好きだったことが、今でも変わらず好き。見事に一貫している!(笑)

ユニ: そう、私は本当に昔から本質が変わっていないのかもしれないですね(笑)。私には姉が1人いますが、彼女は全然違ったタイプで、私が好きなものは嫌いだし、私も姉の好きなものにはあまり興味がない。それは最近の話ではなくて、ずっと昔の子供時代からそう。子供のころも、姉はずっとバレエを習っていて、家にあまりいなかった。私は、鍵っ子で、そういう時間にひとりで家にいることが多かったから、昔からひとりでいることには慣れているし、わりとひとりが好き。

潤平: うちも兄と弟がいるんだけど、僕だけ全然違うタイプ。子供の頃、本来ならば寂しいひとりの時間を、“案外気楽で楽しい時間”と思えた体験が、今のひとりで仕事に向き合う気質を形成したような気もするし、フリーでやっていく上でも組織に属すのではなく、いろんなことを自己完結するほうが楽であったり、心地いいと感じる由縁なのかもしれない。

ユニ:私もそっちが性に合っているかな。子供の頃は、一人でしゃべっていた記憶もある(笑)。鑑識ごっことかも大好きで、ひとりでよくやっていました。

潤平:急に聞き慣れない言葉が出てきましたが、鑑識ごっこって?(笑)

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ユニ:耳かきに綿がついたものとベビーパウダー、黒い紙とセロハンテープで家中の指紋を採取するんです。それで、家族の持ち物をジップロックに入れて証拠品に見立てたり(笑)。

潤平:創意工夫は素晴らしいけれど、歪んでるような(笑)。 普通は、保母さんとか、レジごっことか、そういうことをするんじゃないの、女子は。全体的に男性的というか、生々しいよね?

ユニ:なんかリアルなものにすごく興味があって、徹底的に精度を追求してモノを作っていました。だから歯医者さんごっこもよくしていましたよ。精巧な入れ歯を作って(笑)。

潤平:通常の歯医者さんごっこは入れ歯を作るところからは入らないですよ(笑)。

ユニ:歯医者さんやそこで働く人に興味があったわけではなく、口の内部に興味があって、それを治療することにワクワクしたんですね。ピンクの練り消しを歯茎に見立てて、白い粘土で本格的な歯を作って、そこに黒いマジックで虫歯を描いて、白の絵の具で黒い部分を消して歯の治療をする・・・みたいな。カルテもちゃんとあって、変な筆記体文字で書いたりして(笑)。かなりリアルに再現して遊んでいました。
ちなみに、お医者さんごっこでは、粉の洗濯洗剤をトレーシングペーパーに包んで、本物みたいな薬を作ったり(笑)。

潤平:すごくオリジナルな視点だよね。そういう話を聞くと、ますます今の作品に納得できるというか、作品作りに通じているのかも。少なくとも、他の人にはあまり感じられないようなところにホットスポットがある。では、今はものすごくいい環境だし、状態もいいでしょう?

ユニ:そうかもしれないです。この仕事に就けなかったら、何をしていたのかなって(笑)。

ずっと変わらない人

潤平:天職ともいえる仕事に就いたユニちゃんだけど、一方では事務所を経営しているでしょう。そういう部分はどうしているの?もちろん、売上とかも気になるし。作品作りとは違う視点と頭が必要になるでしょう。僕は実はそういうことがとても負担に感じているタイプ。

ユニ:私もそこは考えずにやり過ごせたら幸せだなとは思うけれど、従業員もいないし、ひとりだから、どこかでなんとかなるかなって、あまりちゃんと考えたことがないですね。本当は考えなくてはいけないのでしょうけれど。

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潤平:ビジネスで成功したいと思ったりはするの?僕は男だし、社員も抱えているから、どうしてもどこかで分かりやすい成功を求めたりしてしまう。ある程度、計算しながら仕事を受けたりすることもあるしね。

ユニ:それは全然思ったことがないですね。

潤平:そういう純粋さは羨ましいな。では、女性アートディレクターはよくひとくくりにされがちだけど、他の人のことは気になったりするものですか?

ユニ: あまり、女性だからとかとは思ったことがないけれど、人並みに他の人のことは気になりますよ。まぁ、でもどちらかと言えば自己完結型なので、あまり気にしないタイプではあると思います。

潤平:でも、まわりが勝手に比べて批評したりしない?そういう時にはどう感じるの?

ユニ:比べないで!って、思います(笑)。たまたま、同世代に沢山の女性アートディレクターがいるから、比べられることは仕方がないのかもしれないですけど、やっぱり放っておいてほしくもあり、そのくくりの中に入れて頂けていることを嬉しく思うことも最近では感じたり、複雑です。
昔、まだ駆け出しの頃に、ある雑誌で女性アートディレクター特集に掲載して頂いたことがあったんですが、その雑誌にはカラーとモノクロの両方のページがあり、特集のほとんどのページがカラーだったにも関らず、私のページだけ最後でモノクロだったということがありました。つまり、カラーからモノクロページに変わる1ページ目に掲載されたわけなんですが、あの時はとても悲しくて、いつかカラーのページに出してもらえるようになりたいと思いました(笑)。

潤平:年代順で掲載されていたからね。確かにあれはかわいそうだった。でも、今では本当にあちこちで名前を聞くし、作品を見るし、吉田ユニはみんなが知っている存在になった。いつも飄々としているから感情が分かりにくい部分もあるんだけど、常に頑張っているでしょう。どうしてそんなに頑張れるの?何がユニちゃんを突き動かしているのかな?

ユニ:やりたいことをやるためだったら、自然とエネルギーが湧いてくる。やっぱりモノを作ることが好きだし、目の前のことに丁寧に集中して向き合うことが好きなんですね。それにつきます。

潤平:ユニちゃんの仕事への向き合い方だと、人に何かを頼むことが苦手でしょう? 誰かを雇うことは考えたりしているの?

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ユニ:苦手ですね。でも、そうできるように勉強しなくてはいけないと感じています。伝え方も下手だし、そこを克服しなくてはと思います。でも、人に伝えている間に自分でできちゃったりするから、なかなかそこがクリアできない。

潤平:僕もそこは苦手。人に頼むことがストレスになっちゃう。僕の場合は自分が書くものに自信があるから、自分より下手な人には頼めないと感じてしまう。

ユニ:誰かに頼むと自分以上のものを求めたりするから難しいですよね。そこに時間を割くことが効率的とは思えなかったりするし、人がひとり加わることで得るものと失うものがある気がして、今は失うもののほうが大きい気がして。きっと、得るもののほうが大きいと思えるようになれば、雇うのかもしれません。

潤平:自分をビリビリ刺激してくれるような巡り会いがあったら、誰かと一緒に仕事はしたいよね。そういう人に巡り会う時期はベストのタイミングでやってくるような気もする。お互いに早い時期に独立をして、ずっと若手と言われ続けて走ってきたけれど、そろそろ中堅の域にも入ってきていて、これから先のことを真剣に考えることが増えたと思わない?いつまでこのスタイルでやるのか、やれるのか。やり続けるのか・・・とかね。そういうことは考える?

ユニ:自分はどうなっていくのだろうとは思います。仕事も、それ以外も。例えば、将来的に結婚や出産もあるかもしれないですし、でもその状況は経験したことがないからわからない。あとは、やっぱり誰かと一緒に仕事をしていくのも悪くないなと思ったりします。実は昨年の個展の時に、いろんな人にサポートしてもらうというシチュエーションがあって、他愛もない会話をするのが楽しかったんです。そういうコミュニケーションの中からアイディアが浮かんだり、ヒントを得たりもするなって。そして、人と触れ合うことでストレスも発散できるし(笑)。だから3年後か、5年後かはわからないですけれど、本当に信頼できる人が現れたら、仕事のパートナーを作るのもアリですね。

潤平:ユニちゃんは、無理に動かないでそのままでいれば、環境が自然と整ってくるような気がする。僕はユニちゃんに、そのままでどんどん成長していってもらいたいなと思っています。

ユニ:私は昔から、人には恵まれてきたので、本当にそんな風になったら嬉しいな。

潤平:なりますよ、きっと。僕には、30年後に白髪と眼鏡で変わらず仕事に没頭しているユニちゃんが想像できます(笑)。

吉田 ユニ
Yuni Yoshida
アートディレクター
1980年生まれ。女子美術大学卒業後、大貫デザイン入社。宇宙カントリーを経て2007年に独立。広告、CDジャケット、映像、装丁など幅広く活動中。最近の主な仕事に、ラフォーレ原宿 、Mercedes-Benz Fashion Week Tokyoキービジュアル、三越伊勢丹「GLOBAL GREEN」キャンペーン、木村カエラやCharaのCDアートワーク、野田秀樹演出舞台「THE BEE」「半神」のアートディレクション等。
http://www.yuni-yoshida.com/
渡辺 潤平
Junpei Watanabe
コピーライター
コピーライター。1977年生まれ。 早稲田大学教育学部卒業。
博報堂、GROUNDを経て渡辺潤平社設立。
最近の仕事にオロナミンC「前向き!前向き!」、日経電子版「田中電子版」、千葉ロッテマリーンズ、三菱地所グループ「三菱地所を、見に行こう。」など。 カンヌ国際広告祭ブロンズ、TCC新人賞、日経広告賞部門賞など受賞。
http://www.watanabejunpei.jp/

「広告コピーの筋肉トレーニング〜近道はない〜」渡辺潤平著(グラフィック社)