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スウィーツ弁護士

Text : Takehiro Fujita

はじめまして、スウィーツ弁護士こと、藤田剛敬(ふじたたけひろ)です。
スウィーツの六法全書編纂をコンセプトに、スウィーツの甘美な風をお届けします。

タイトルからお気付きの方もいるかと思いますが、私の本業は弁護士です。2003年に旧司法試験に合格し、プロジェクト・ファイナンス、PFI、資産流動化、REIT、金融商品取引法関連、ファンド組成、その他ファイナンス関連法務を専門に、M&A、渉外取引法務、一般企業法務なども含め、企業法務を中心に業務を行っています。Boston University, School of Law, Banking and Finance programへ留学し、より専門的にファイナンス法務を学びました。

このような堅い仕事をしていますが、スウィーツが大好きという軟らかい一面もあります。
振り返ってみると、私の周りには常にスウィーツがありました。誕生日には母がホールでショートケーキとチョコレートケーキを作ってくれましたし、部活ではクッキーをご褒美につらい練習を乗り切りました。ザッハートルテを食べ比べるためにウィーンへ行くこともあれば、モンブランの美味しい食べ方で1時間近く議論をしたり、マカロンの包容力に癒されながら複雑かつ膨大な数の契約書をドラフトしたりということも。

弁護士といえども全ての法律を記憶しているわけではなく、様々な法律が記載されている六法全書というものを見ながら、条文を解釈して法的判断をしていきます。
そこで、このコラムを通して、数多あるスウィーツに関し、人それぞれの解釈に至るための手掛かりとなり得るべく、いわばスウィーツの六法全書としてのセンスをお伝えしていきたいと思います。

この六法全書は、季節感のある「色」をテーマに編纂していきます。各色の法律?!を読み終わった後に、「そうだ、スウィーツ食べに行こう!」との解釈に至ることを祈って。

それでは、法律第1号のテーマは「赤」です。

まずは、ピエール・エルメのイスパハン。

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背景の白い部分の模様を見てエルメと気付かれた方も多いと思います。
ローズ、フランボワーズ、ライチを組み合わせた絶妙な一品。ローズ風味のスウィーツは、その香りが故に後味が強烈すぎるものも時としてある中、イスパハンは不思議な奥ゆかしさがあります。ローズのクリーム単体ではもちろんローズが主張しているのですが、フランボワーズと一緒だと、その酸味の中に埋没していくように感じます。しかし、ふと気付くと鼻の奥にかけてふんわりとローズの香りが抜けてきます。それぞれ主張し合うものが調和する不思議さと後味の優美さを感じられます。

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W.ボレロのケーキです。不覚にも名前を忘れてしまいました。。

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ただ、断面図を見るとその味を想像できるのではないでしょうか。それぞれの味が喧嘩することなく、口の中ですっと溶け合う感覚です。
苦々しさはなく、安定的なコンビネーションへの安心感を有する一品です。
何となく味を想像できましたでしょうか?

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Hugo & Victorのボンボンショコラ。イチゴのピューレとシャンパンを使用したドーム型のチョコレートです。
チョコレートはかなりビター。かなり深くビターな余韻が残ります。一方で、中のイチゴとシャンパンのガナッシュがそこまで印象に残らないのも事実です。比較的柔らかいガナッシュですが、香りの広がりと後味の余韻が浅めといいましょうか。チョコレートがかなりビターな分、ガナッシュはもう少し香り高くても良かったのでは?
但し、チョコレート部分の構成は秀逸です。かなりビターにもかかわらず、外側のチョコレートに甘みを感じる。ビターと甘みの両立を経て、柔らかい余韻が残ります。

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年により色は異なりますが、手帳のようなケースに入っています。

御影高杉のミルフィーユ・オ・フリュイ。全体の印象で赤としました。

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ミルフィーユの生地は焦げ系の苦めの味がし、キャラメリゼされた表面が他の味を消さない程度の甘さで調和しています。さらに、カスタードが味にハーモニーを加える感覚。
イチゴと食べるとその酸味が広がり良いアクセントになる一方で、その酸味がほのかな甘さのハーモニーを消してしまうことも。まずはイチゴを外して食べ、少し同じ味に飽きたかなという時にイチゴも一緒に食べるというように、メリハリを付けると何通りにも楽しめます。何回でも食べたい。

ヴァンサン・ゲルレのチョコレート。イレギュラーですが、箱が赤ということで。

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チョコレートの口どけが最高です。カカオのフルーツ、スモーキーさがふんわり香り、鼻の奥に漂います。ビター感やフルーツ感が強く主張するわけではなく、とにかくふんわりと空間を占めます。決して味が薄いわけではなく、カカオの香りや味がきちんと主張。とても不思議。味の輪郭がしっかりとしているという印象です。

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オテル・プラザ・アテネのチョコレート。再び、箱が赤ということです。

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ふたを開けた瞬間のあのカカオの香り!期待高まり過ぎです。
蓋を開けた瞬間のカカオの香りから想像されるビター感とは裏腹に、なんとミルクチョコレートです。そして、くどさがない。裏にナッツが散りばめられている。この大きさのミルクチョコレートを食べ続けたらさすがにくどくなってしまうところを、このナッツの香ばしさで味を変えています。そして、全く異なる味になります。

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食べて落ち着けるやさしい味。観光で疲れて部屋に戻りこれを食べたら、その疲れや緊張感が和らいて安心できる感じ。ここまで考えて「ホテル」でこのチョコレートを出しているのかもしれない。そうだとしたらただただ感服です。

今月は以上です。それでは、スウィーツを食べに行きましょう!

藤田 剛敬
Takehiro Fujita
1979年横浜生まれ。スウィーツをこよなく愛する凄腕弁護士。 慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、2003年に旧司法試験に合格し、弁護士として活動しています。ファイナンス関連法務を専門に、金融商品取引法等の業法対応、ファンド組成、M&A、一般企業法務にも深い知見を有しています。また、Boston University, School of Law, Banking and Finance programへ留学し、LL.M.を取得しました。 一方で、スウィーツ会のメンバーとしても活動し、和洋問わず様々なスウィーツを吟味しレビューしています。