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旅する哲学写真家

東欧/異色の華ハンガリーの愛

Text : Jo Moriyama

この世界は広くて狭い。

今回、ご紹介するのは、東欧/異色の華ハンガリーの愛のお話です。

数世紀前のヨーロッパの大国オーストリアハンガリー二重帝国、ハプスブルグ家から花開いた大きな国のなごりを今もなお、匂わせるハンガリー。

しかし、どんなに花を開いた大国でも、このヨーロッパの盆地に位置する国の冬は厳しい。骨の芯まで凍るような寒さに、若い恋人たちの寄り添い語らう時間は長く熱い。まるで、明日には永遠の別れが待っているようである。

年を重ねるにつれ、恋人たちの物理的距離は遠くなる様子は、日本よりも著しく、浮き彫りに現れる。それは、甘い幻儚く消えて行くのである。

21世紀とは思えないほど、寂れた鉄道や、路面電車では、恋人の膝の上にしか女性は乗らない。なによりも暖かい膝の上が存在するが、年を重ねたもの達は自分にも訪れたであろう甘い記憶を遠目に眺めている。

映画の愛情豊かな表現は永遠ではないと憂いているような光景にしばしば出会う。

夫を早くして亡くした老婆は、厳しい表情で若者の愛の語らいを見つめ続ける。この凍り付いた大地の上でハンガリーの人々は、儚くも情熱的に愛を語らい、その先にいったいなにを見いだすのだろう。

愛は互いがレールであり、車両になる道のりならば、恋はいつでも、停車駅に起きたドラマに過ぎない。

ハンガリーの憂いのドラマだけは鳥の語らいのように見る事は簡単だが、
風の吹く冷たい冬にも、夏の照りつける太陽の下でも愛だけは空気のように目に見えなくとも存在しているのだ。

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ジョー・モリヤマ
Jo Moriyama
写真家/トラベルジャーナリスト
1978年ハンガリー人の母と日本人の父の次男としてベルギーブリュッセルに生まれる。幼少期をベルギーとスイスで過ごし、4歳~20歳まで毎夏を過ごしたスイスのサマースクールには約60カ国から様々な子供達が集まっていた。その様な多国籍の教育環境の中で、国際感覚を身につける。14歳で日本へ移住、神奈川県鎌倉市で思春期を過ごす。
大学時代から世界を旅する事に時間を費やし、現在も旅を続けている。
各国の世界観や道徳を理解し、その国の目線で人や風土風俗を体験する事を好む。その為、インド、ギリシャ、仏教圏等の哲学や各国の宗教、神学、心理学に興味を持ち、常に自問自答しながら旅を続け、独自の世界観を確立させた。
「文法を正しく使えないと言葉を喋れるとは言えない」という父の教えに忠実に、フランス語、日本語、英語、イタリア語、ヒンディー語、ウルドゥー語といった多言語をマスター、アフリカ全土、インド・パキスタン、ベトナム、ラオス、ヨーロッパ各国、カナダ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド等、世界の約7割の地域でコミュニケーションが可能。
旅をする時にその国の言語が理解出来る事は、理解出来ずに旅をする事と比べて大変大きなアドバンテージだ。すれ違う人の何気ない会話が分かり、街並の看板やサインを全て読めるということは、その国の日常を理解出来るということ。様々な国に直接触れる度に、常識や価値観の大転換が起こる。この世界はどうなってるんだろう?違いを知ったり驚いたり納得したり...と、考えるのが好き。そして、世界中に色々な友達が出来た。そんな旅先の写真が切っ掛けで写真家を目指す。
故・山口イサオ氏の元で下積みをし、その後、青山スタジオに勤務後、26歳で独立。世界中を旅した経験から、撮影対象を理解し、人や物・景色の本質的な表情を引き出した瞬間を切り取る事を最も得意とし、世界を舞台にファッション撮影や広告、カタログ撮影等をおこなっている。
Instagram jomoriyama
http://www.jo-moriyama.com