Qorretcolorage - コレカラージュ

彩り重ねるコレカラの人生
大人のハッピーエイジングメディア

温泉くん

三朝温泉 桶屋旅館(鳥取県)

みなさま、こんにちは。温泉王子、通称「温泉くん」こと小松 歩(こまつ あゆむ)です。
まだまだコロナ禍の中で油断できない状況が続きますが、温泉好きとしては思いっきり温泉を楽しみたいものです。にぎわっている温泉地を見ることはとてもうれしいのですが、半面、密になってしまうのでは、と少し不安になってしまう気持ちもあります。それを気にせずに温泉旅行を楽しむのなら、小さな旅館でお湯そのものに集中するのも一つの選択肢ではないでしょうか。
今回は、喧騒から離れて温泉そのものを楽しめる小さな宿、鳥取県・三朝温泉にある「桶屋旅館」をご紹介します。


鳥取県三朝町に湧く三朝温泉は、三徳川沿いに20軒ほどの旅館・ホテル・民宿がたたずむ山陰地方屈指の温泉地。鳥取空港から車で1時間ほどとアクセスも良好です。1164年の平安時代末期に発見されて以来の長い歴史があり、明治時代に世界レベルのラドン(放射能)が温泉に含有されたことが分かったことから、温泉を研究する大学機関や療養施設まで有しています。
大きな旅館やホテルも多く、温泉街の中心は飲食店や遊戯施設、土産物屋が立ち並び、にぎやかな雰囲気を楽しむことができる三朝温泉。そんな温泉街の中心から少し離れた静かな通りに「桶屋旅館」はあります。


「桶屋旅館」は客室が全8室という小さな宿。大正時代創業という歴史を誇り、年季の入った木造2階建ては素朴で風情があります。なんだか旅行というよりも、田舎の親戚の家に遊びに行ったような懐かしさと安心感のある雰囲気です。
ここは昔から温泉療養の「湯治宿」として親しまれてきました。今でも湯治目的で連泊するお客様も多く、宿の温泉は日帰り入浴不可(宿泊しないと入れない)になっており、お湯に集中できる環境が整っています。


桶屋旅館は、三朝温泉では珍しい「自家源泉」が湧く「桶屋の湯」という浴室と、三朝温泉の「共同源泉」を使用した「新館の湯」という浴室の2種類の源泉とお風呂を有しています。それぞれ内湯で男女別ですが、夜の時間帯で入れ替わるため、どちらのお風呂も楽しむことができます。
とはいえ、この旅館の名物は自家源泉を楽しめる「桶屋の湯」です。源泉の湧いているポイントに浴槽を作っているため、湯船の底からじわじわとお湯が出てくる「足元湧出」が温泉好きにはたまらない。服を脱ぎ、階段を降りて湯に漬かる半地下の構造も面白く、令和の時代から隔離されたような独特の「ひなびた雰囲気」の中、お湯とじっくり対峙することができます。


泉質は、含弱放射-ナトリウム-塩化物泉。無色透明のお湯は、ほのかに鉱物っぽい湯の香りが漂い、なめるとほんのり塩気を感じます。スベスベ感とミネラルのキシキシ感を同時に味わえる肌触りも入り応えありです。
ここの泉質含め、三朝温泉は全国屈指の「放射能泉」として有名です。放射能という言葉はマイナスのイメージを持っている方もいらっしゃると思いますが、温泉の放射能は原発などのそれと種類や半減期などの違いがあり、この泉質は「万能の湯」といわれるほど効能豊か。「ホルミシス効果」といわれ、細胞に刺激を与え活性化し、体質改善や免疫力アップに効果があります。健康効果は非常に高く、三朝温泉エリアのがん患者は、全国平均に比べ少なく、がんの死亡率は全国平均の半分というデータもあります。
そんな放射能泉の効果を最大限に得るには、気体のラドンを吸入することがポイント。露天風呂では吸入する前に、漂うラドンが飛んでしまうため、「桶屋の湯」のように内湯に入るのが理にかなっているといえます。


温泉旅行の楽しみは食事にもあります。ここは「湯治宿」のため、見た目に豪華絢爛なメニューはありませんが、地元の旬な食材を使用したごはんを食べることができます。宿泊した日は、地元三朝町産の米や地場の魚や肉を使った料理とともに、地酒「鷹勇(たかいさみ)」を堪能でき、身体も心も喜んでいるようでした。
連泊の方も多いので、メニューはできるだけ毎日違うものを出してくれるのもうれしいポイントです。


なかなか落ち着かないコロナ禍。そんな中でも温泉旅行には行きたい。いつもはアクティブに飛び回る方も、今の時期は宿でじっくり温泉そのものと対話してみてはいかがでしょうか。一つのことに集中してみると今までにない充実感があるものです。桶屋旅館で過ごす時間は、そんな素敵なひとときでした。

小松 歩
Ayumu Komatsu
1987年東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。大学の4年間を北海道で過ごし、その間に生死を彷徨う交通事故の後遺症治療で湯治を体験し、温泉に目覚める(知床でドライブ中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。今では全国で2,000湯以上の温泉に入り、入浴剤メーカーに勤務しながら「温泉くん/温泉王子」として執筆活動をしています!